【書評】〝ガチ〟のバイオ研究者が書いたコーヒーの本
 解説:松田 明(ライター)

『コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか』(旦部幸博著)

著者の専門はバイオ研究

 日本国内のコーヒー消費量は、2001年が41万トン余りだったのが2015年には46万トン超と、ゆるやかながら年々増加の傾向にある(全日本コーヒー協会データ)。
 スターバックスが唯一なかった鳥取県にも今や出店し、コンビニも淹れたてコーヒーの店頭販売を相次いで始めている。 続きを読む

【書評】新しい「現実」の感触がここにある
 解説:茂木健一郎(脳科学者)

『魔法の世紀』(落合陽一著)

「デジタル・ネイティヴ」という言葉がある。インターネットなどの技術は、かつては新奇で特別なものだったが、いつかは当たり前のものになる。それは、喩えて言えば、空気のようなものになる。

 コンピュータという存在が、私たちの環境の中に溶け込んでいくのだろう。かつては、コンピュータは、巨大な機械仕掛けの装置だった。それが、電子式になり、集積回路になり、ムーアの法則に従って高性能化、小型化していくと、次第に日常生活の中に空気のように拡散していく存在になるのだろう。 続きを読む

書評『陸前高田から世界を変えていく 元国連職員が伝える3.11』
 解説:松田 明(ライター)

『陸前高田から世界を変えていく 元国連職員が伝える3.11』(村上清著)

街そのものが消えた陸前高田

 陸前高田市は岩手県の東南端の街。太平洋に向かって広田湾が開け、隣は宮城県気仙沼市になる。山間から流れる気仙川が森の養分を広田湾に注ぎ、極上の牡蠣やワカメを育てている。
 だが、あの東日本大震災では高さ10メートルを超す大津波が市街地に襲いかかった。「日本百景」だった高田松原の7万本の防潮林は1本だけを残して壊滅。一部4階建ての市役所も屋上までのみ込まれ、111人の職員が帰らぬ人となった。 続きを読む

書評『「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか』
 解説:松田 明(ライター)

『「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか』(浅羽通明著)

「言葉への信頼」を腐らせているのは誰か

 いささか刺激的な書名ではあるのだが、非常に丁寧に、そして誠実に作られた書物だというのが、読み終わっての率直な感想である。
 ちなみにカバーの折り返しには、

 これは勝ちたいリベラルのための真にラディカルな論争書だ。

 ともある。 続きを読む

今こそ庶民の力で両国関係を動かす時――書評『日本と中国の絆』
 解説:青山樹人(ライター)

『日本と中国の絆』(胡金定著)

〝相手の側の気持ち〟を考える

 著者の胡金定氏は甲南大学教授。1956年、中国・福建省生まれ。国立厦門大学を卒業後、世界銀行の奨学生となって日本に留学し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程を修了した。日本暮らしは既に30年余、人生の半分を超えている。
 本書(『日本と中国の絆』)は日本と中国の文化の比較研究を続けてきた胡さんが、日常の生活習慣や文学作品、あるいは歴史上の人物の逸話などを通し、両国のかかわりを読み解いたエッセイ風の論考集である。 続きを読む