【書評】政治・宗教を熟知した著者による公明党論の決定版
 解説:吉田徹(北海道大学大学院教授)

『佐藤優の「公明党」論』(佐藤 優 著)

 最近になって、公明党について少なくない書籍や論評が刊行されるようになった。書籍では薬師寺克行『公明党』、中野潤『創価学会・公明党の研究』などがあり、雑誌でも『中央公論』や『週刊ダイヤモンド』が公明党や創価学会について特集を組んだ。興味本位や一方的な批判ではなく、歴史的・社会的観点から公明党を論じる傾向が顕著になってきたのも、同党が与党を経験してから約四半世紀、自民党との連立が15年に及び、日本政治で無視できない存在となってきたことの証しである。

 中でも、元外務省職員・作家の佐藤優氏は数多くの論評を手掛けてきた。知られているように、氏は神学を修めたクリスチャン(プロテスタント)でもある。政治と宗教の両方の世界を熟知している彼ほど、公明党と創価学会を語るのに適任はいないだろう。本誌で約半年にわたった連載記事をまとめた本書は、ますます精力的な同氏による公明党論の決定版ともいえる。

 内容は、主として公明党党史編纂委員会『大衆とともに――公明党50年の歩み』のコメンタール(注釈)である。コメンタールは聖書や法律書についての注釈として歴史的に用いられてきた手法であり、佐藤氏は聖書やマルクス『資本論』などを同様の手法でもって紹介してきた。中には池田大作『私の履歴書』も紹介されているが、「平和の党」としての安全保障政策、「福祉の党」としての社会保障政策なども評価されており、公明党の特徴を摑むのに最適な書ともいえるだろう。「ローマ法王」という呼称を正しく改めることができれば、バチカンからも評価されるはずといった、著者ならではの提言も興味深い。

 注目は本書が英語の対訳になっていることだ。公明党への関心は海外の研究者、ジャーナリストの間でも高まっている。そうした中、英文での情報発信は不可欠である。その英文タイトルは「変革する力(a Transformative Force)」となっている――公明党がこれからどのような変革をもたらすのか、さらに注目が集まることだろう。


『佐藤優の「公明党」論』
『佐藤優の「公明党」論』
佐藤 優 著
第三文明社
税抜価格 1.200円+税
発売日 2017年2月28日