空手普及100年――唐手から空手へ(上)

ジャーナリスト
柳原滋雄

本土への空手普及から1世紀

文部省主催の運動体育展覧会を報じる読売新聞(1922年4月30日付)

 沖縄の「唐手」(以下、一部「沖縄空手」と表記)が公式に日本本土に伝来して今年でちょうど100年になる。
 1922(大正11)年4月30日から1カ月間にわたり東京で開催された文部省主催の「運動体育展覧会」において、あらゆるスポーツ・武道の展示の中で初めて唐手が取り上げられ、沖縄から一人の空手家が上京したことに始まる。武人の名は船越義珍(旧姓:富名腰 ふなこし・ぎちん 1868-1957)。
 明治元年に沖縄県の首里山川町で生まれ、小学校の教員として沖縄本島で青年、壮年期を過ごした。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第130回 懐かしい小説家

作家
村上政彦

 小説家になる者は、誰でも「自分の作家」を持っているとおもう。分かりやすい言い方をすれば、好きな作家だ。僕は、あちこちで言っているが、最初に個人全集を買ったのはドストエフスキーだ。次に、友人から梶井基次郎の全集を、ある祝いに贈られた。
 ドストエフスキーも、梶井基次郎も、「自分の作家」だった。しかしどちらも亡くなっていた。生存していて、いままさに小説を発表して活躍している作家として、これは「自分の作家」だとおもったのは、中上健次だった。
「岬」という中篇を読んで、彼が描く世界に惹かれた。荒々しく、禍々しく、しかしどこかに温かな優しさがある。舞台になった紀州の路地は、のちに被差別部落だと知ったが、僕の身の回りにも、同じような土地があって、そこに住んでいる人々とは親しくつきあっていた。だから中上の描く世界は、とても身近に感じられて、自分の生きているこの世界が小説になりうるのだという発見に繋がった。 続きを読む

醜聞と不祥事が続く立憲民主党――共産との政権協力は白紙

ライター
松田 明

袖にされた日本共産党

 今夏の参院選について、立憲民主党は日本共産党との「政権協力」合意は見送り、1人区での候補者一本化も〝限定的〟におこなうことを決めた。
 両党は昨年の衆院選を前に、もし立憲民主党が過半数を獲得した場合の政権について、日本共産党と〝限定的な閣外協力〟をすることを党首間で合意していた。
 だが、野党第一党が国家観も憲法観も安全保障政策も異なる日本共産党と「政権協力」まで至ったことに有権者は失望。その結果、立憲民主党と日本共産党がそろって議席を減らし、立憲民主党は党創設の執行部が退陣する最悪の事態となった。
 新執行部を率いることになった泉健太代表は、共産党との「政権協力」は衆院選で終わった話という認識を示し、本年1月のNHK番組でも、

立民の政権を構成する政党には共産党は想定にない(「日本経済新聞電子版」1月9日

と明言。「政権協力」は既に存在しないという就任以来の見解を重ねて示した。 続きを読む

日本共産党と「情報災害」――糾弾された同党の〝風評加害〟

ライター
松田 明

IAEAがまとめた報告書

 4月29日、IAEA(国際原子力機関)は、東京電力福島第一原子力発電所が2023年に海洋放出を計画している「ALPS処理水」について、調査チームによる第1回の報告書をまとめた。
 福島第一原発では、原子炉内に事故で溶けて固まった燃料デブリが残っており、水をかけて冷却が続けられている。
 燃料デブリに触れた水は高濃度の放射性物質を含んだ「汚染水」になる。
 そこで、多核種除去設備「ALPS(アルプス)」など、いくつかの除去設備を使用して浄化処理をおこなって、セシウム、ストロンチウムをはじめ大部分の放射性物質を取り除いている。
 こうしてできたものを「ALPS処理水」と呼ぶが、トリチウムだけは取り除けない。
 じつは、トリチウムは水素の仲間(同位体)であり、雨水や河川の水など自然界にも存在するものだ。 続きを読む

岸田首相に対して核兵器のない世界を強く諭したローマ教皇

中部大学教授
酒井吉廣

 令和4年5月3日、4日、岸田文雄首相はイタリア共和国及びバチカンを訪問し、4日にはローマ教皇フランシスの謁見を受けた。
 今回のローマ教皇と岸田首相との会談の内容は、将来の核兵器禁止条約を日本がどう扱うべきかを考えるのに重要だと理解したので、とても短い原稿になるが、寄稿した次第である。

日本政府と教皇庁で異なる岸田首相謁見の報道

 4日のローマ教皇との会談で日本政府の報道では、核兵器の廃絶に向けた両者の認識の一致とウクライナ情勢について岸田首相が語ったことになっている(「ローマ教皇フランシスコ台下への謁見・日バチカン首脳会談」外務省HP)。 続きを読む