【書評】全米30万部のベストセラー
 解説:本房 歩(ライター)

『自分で「始めた」女たち ――「好き」を仕事にするための最良のアドバイス&インスピレーション』(グレース・ボニー著、月谷真紀訳)

ことばと姿を「見て」ほしい

 全米で30万部のベストセラーとなった本。
 邦訳は2019年に出版されたが、日本でもじわじわと評判が広がり、コロナ禍にある本年5月、11刷となった。
 新型コロナウイルスの感染拡大は、人々の日常にさまざまな影響を与えた。時差出勤やリモートの推奨など働き方も変わった。
 第2波、第3波の襲来が確実視されているなかで、緊急事態宣言が解除されたからといって、あっさり元の日々には戻れない。
 職を失った人や、これまでの職場を閉じざるを得なかった人もいる。
 また、子育てや家族の介護などをしながら働いてきた人々は、より大きな困難を強いられた。とりわけ、女性たちが抱えた負担は大きかっただろうと思う。
 本書は、自分で仕事を始めた女性たち112人を紹介するものだ。 続きを読む

【書評】子どもたちを守ってきたのは誰か
 解説:本房 歩(ライター)

『夜回り先生 水谷修が見た公明党』(水谷 修)

なぜ夜回りを始めたか

 書評子として、自分の「感情」をあからさまに書いてしまうのは、誉められる話ではない。
 じつは第三文明社から本書が届いたとき、書名だけで勝手に内容を想像してしまっていた。
 ああ、あの「夜回り先生」として知られる水谷修氏が、きっと公明党の政策なり実績なりを肯定的に評価する書籍なんですね、と。
 ところが、プロローグからわずかに読み進めるうちに、不覚にも目頭が熱くなってしまった。それはエピローグを読み終わるまで何度も続いた。 続きを読む

【書評】緻密な検証で追うタブー集
 解説:本房 歩(ライター)

『ガラパゴス政党 日本共産党の100年』(柳原滋雄)

社会党の近親憎悪

 なぜ著者がこの本を書くに至ったのか。
 その理由が端的に「エピローグ」のなかに記されていた。
 著者は早稲田大学に入学した当時、自分の学部の自治会を仕切っていた「民青」の意味さえよく理解していなかった〝典型的なノンポリ学生〟だったと述懐している。
 ちなみに「民青」とは「日本民主青年同盟」の略であり、日本共産党の下部組織である。
 卒業後、編集プロダクション勤務などを経て、当時の社会党機関紙『社会新報』の記者になった。

 編集部には、政党機関紙『赤旗』が置かれていたが、熱心に読んだ記憶はない。ただし社会党の中でしばしば感じたのは、同党内の強烈な共産党アレルギーで、近親憎悪に似た感情が渦巻いていた。(本書)

 1996年末に民主党の結成で社会党は分裂。著者はフリーランスになった。 続きを読む

【書評】教育界・実業界の風雲児
 解説:本房 歩(ライター)

『評伝 戸田城聖(上)』(「創価教育の源流」編纂委員会 編)

淵源としての創価教育

 牧口常三郎、戸田城聖、池田大作という創価学会の三代の指導者は、今や世界宗教として広がる創価学会の指導者であると同時に、やはり世界に共感を広げゆく「創価教育」の指導者でもある。
 創価学会は牧口常三郎の「創価教育」を研究実践する「創価教育学会」という教育者の団体から出発した。
 一般的には、特定の宗教や宗派の信仰が先にあって、その教理を土台に教育機関がつくられるケースがほとんどだろう。教団の聖職者を養成する学校から発展した大学も多い。
 ところが創価学会の場合は、ある意味で先に「創価教育」という、あくまでも普遍的な特定の信仰に縛られない教育理念の実践があって、そこから日蓮仏法にもとづく宗教運動へと収斂(しゅうれん)したといえるのかもしれない。
 牧口常三郎も戸田城聖も、卓越した教育者であった。 続きを読む

【書評】扇動した政治家たちの罪
 解説:本房 歩(ライター)

『年金不安の正体』(海老原嗣生)

「まず謝れよ国民に」

 2019年7月の参議院選挙で、野党が〝争点〟だとしたのが「消費税」と並んで「年金不安」だった。
 金融審議会「市場ワーキング・グループ」が提出した報告書に、

夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1300万円~2000万円になる。

と記載されていたことを、立憲民主党や国民民主党、日本共産党など野党がいっせいに問題視したのだ。 続きを読む