【書評】扇動した政治家たちの罪
 解説:本房 歩(ライター)

『年金不安の正体』(海老原嗣生)

「まず謝れよ国民に」

 2019年7月の参議院選挙で、野党が〝争点〟だとしたのが「消費税」と並んで「年金不安」だった。
 金融審議会「市場ワーキング・グループ」が提出した報告書に、

夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1300万円~2000万円になる。

と記載されていたことを、立憲民主党や国民民主党、日本共産党など野党がいっせいに問題視したのだ。 続きを読む

【書評】宗教間対話の記録
 解説:本房 歩(ライター)

『牧師が語る仏法の師』(ローレンス・E・カーター著/広田明美訳)

全米で評価された書籍

 本書は2つの意味で、読者にとって有益なものをもたらすだろう。
 第1は、マーチン・ルーサー・キング・ジュニアが真にめざしていたものは何だったのかということへの、洞察と理解である。
 第2は、創価学会の世界宗教化とは、どのようなプロセスと展開を経ていくのかということへの想像力である。
 本書の原題は『A Baptist Preacher’s Buddhist Teacher』(バプティスト牧師の仏法の師匠)。
 2018年11月に米国のミドルウェイ・プレスから出版された同書は、キリスト教のもっともすぐれた書籍を選出するイルミネーション・アワードの「回想録」部門で、2019年の金賞に輝いた(「聖教ニュース」2019年4月22日)。
 著者のローレンス・E・カーターは、キリスト教バプティスト派の牧師であり、マーチン・ルーサー・キング・ジュニアの母校モアハウス大学にある「キング国際チャペル」の所長である。 続きを読む

【書評】好評連載がオールカラーで書籍化
 解説:本房 歩(ライター)

『世界の名画との語らい』(聖教新聞外信部編)

聖教新聞外信部の挑戦

 新聞のクオリティーは、その「文化欄」を見れば分かるとしばしば言われる。
 本書は『聖教新聞』12面に2018年3月から現在も連載されている「世界の名画との語らい」をまとめたもの。
 言うまでもなく『聖教新聞』は創価学会の機関紙であるが、日本では読売、朝日につぐ発行部数を有する、大きな影響力を持った日刊の全国紙でもある。
 ただ、一般的に新聞の美術記事は学芸部か文化部が担当するのに対し、この「世界の名画との語らい」がユニークなのは、外信部が担っていることだ。 続きを読む

【書評】初めて明かす自伝的エッセイ
 解説:田原総一朗(ジャーナリスト)

『孤独の意味も、女であることの味わいも』(三浦瑠麗著)

 どんなことでも率直に話し合える。安心して討論もできる。三浦瑠麗という人物を、私は女性として信頼している。裏切る、ということのない数少ない人物だと捉えている。
 それにしても、これは凄まじい書であった。
 ここまで、自分と夫との関係、そして母親と娘との関係を具体的に書くとは、私にはとてもできないことである。 続きを読む

【書評】待つのではなくて、葛藤してみる
 解説:韓英恵(女優)

『「女子」という呪い』(雨宮処凛著)

 父親が韓国育ちの日韓家庭で育った私はまさしく、「女は家庭、男は仕事」で育った。

 私の父にはフェミニズムの言葉はなく、家族の中で父親が一番えらく権利を持つという考え方の人だった。 続きを読む