【書評】たくさんの刺激と人生のヒントがここにある
 解説:東晋平(ジャーナリスト)

『アーティストになれる人、なれない人』(宮島達男編)

 1冊の新書版にしてはゴージャス過ぎるラインナップなのである。

 世界的にその名を知られる現代美術家・宮島達男。その「世界のミヤジマ」がホスト役になり、フランス芸術文化勲章オフィシェを受章した杉本博司、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受けた西沢立衛をはじめ、現代日本を代表するクリエイトな人々が計7名登場して自分自身のことを語る対話編。 続きを読む

【書評】新時代の生き方を模索する人々に捧ぐ
 解説:茂木健一郎(脳科学者)

『不安が力になる──日本社会の希望』(ジョン・キム著)

 脳の働きから見れば、ある人のことをいちばんわかるのは、その人と共通点も、相違点もほどよく兼ね備えた他者である。

 自分のことは、案外わからない。自己を相対化する視点が欠けているからである。また、あまりにも遠い人のこともわからない。類推ができないからである。 続きを読む

【書評】アメリカの驚愕の事態がここに
 解説:田原総一朗(ジャーナリスト)

『㈱貧困大国アメリカ』(堤 未果著)

 堤未果氏のアメリカをターゲットにしたルポタージュは、その細やかで、多岐にわたる具体的な取材で群を抜いている。前書『ルポ 貧困大国アメリカ』でも驚嘆させられたが、今回の書は、アメリカの大矛盾を、さらに鋭く、そして容赦なく摘発している。 続きを読む

【書評】「脳」という視点で「現代の黒船」の対応を考える
 解説:宇野常寛(評論家)

『新しい日本の愛し方』(茂木健一郎著)

 茂木健一郎という知性が日本社会に与えたインパクトを一言で言えば、それは「こころ」は「記述」できるという前提で人間に、文化に、そして社会にアプローチしたことに尽きるだろう。

 文学的な「内面」ではなく、特定のプログラミングによって動く「脳」を前提にした思考は、時に淡白な人間観を生むという批判を呼ぶ一方で確実に多角的で明晰な人間と社会を語る言葉を獲得し、支持を集めていった。 続きを読む

【書評】女性俳人たちのめくるめく恋愛俳句の世界
 解説:加藤真理(編集者)

『胸に突き刺さる恋の句 女性俳人百年の愛とその軌跡』(谷村鯛夢著)

 いま、俳句人口1000万人、といわれる。各種の俳句大会や句会を見ても主力は女性で、専門俳人団体の会員も約65%が女性とのこと。女性俳句大隆盛、といってさしつかえないだろう。

 もともと、男は俳句、女は短歌と言われていたものだが、この女性俳句大隆盛はどのようにしてもたらされたのか。 続きを読む