【書評】財政破綻の未来を直視する
 解説:柳原滋雄(ジャーナリスト)

『迫り来る 日本経済の崩壊』(藤巻健史著)

 結局、『そこそこの合理化』ではもうダメなのだ。行政を『やめる』決断を政治家が行い、それを国民がうながすしか、本当の解決の方法はないのである。

 財政危機に対し、京都大学の吉田和男教授(当時)が『あなたの隣の大問題 日本の国家予算』でそう指摘したのは今から約20年前の1996年のことだった。 続きを読む

【書評】家庭に閉じ込められていた「死」が社会に漏れ始めた
 解説:イケダハヤト(プロブロガー)

『孤独死のリアル』(結城康博著)

 日本橋・人形町で暮らしていた5年前、築30年ほどのワンルームマンションに住んでいました。そのマンションの入居者の大半はビジネスパーソンでしたが、何名か、一人暮らしの老人が住まわれているようでした。何度かゴミ捨て場ですれ違っただけで、結局、彼らの名前を知ることはありませんでしたが……。

――彼らは今どうしているのだろうか。倒れたとき、助けてくれる人はいるのだろうか。 続きを読む

【書評】生活困窮者支援のあり方を提示する必読の書
 解説:茂木健一郎(脳科学者)

『生活困窮者への伴走型支援』(奥田知志・稲月 正・垣田裕介・堤圭史郎著)

 職を失ったり、家族の誰かが病気になったり、あるいは、心のバランスが崩れる。さまざまなことをきっかけにして、誰でも、生活困窮者になることがある。

 そのような時に、社会が助けをさしのべるのは、人間として当然のことだし、憲法にも保障されている。ところが、世間の目は、往々にして厳しいと、本書の著者の1人である奥田知志さんは言う。

 いざという時に、周囲が助けてくれるという心の「安全基地」がなければ、新しいことへのチャレンジもできない。 続きを読む

【書評】教育政策を考える一書
 解説:山口二郎(北海道大学大学院教授)

『文部科学省―「三流官庁」の知られざる素顔』(寺脇研著)

 著者は、ゆとり教育を推し進め、日本の子どもたちの学力低下をもたらした元凶として、批判されることのほうが多い。

 しかし、それは世の中がまだ著者の理念に追いついていないからだと私は考えている。

 このたび、古巣である文部科学省の歴史と現状を分析する本を出して、教育政策について落ち着いた議論をするよう訴えた。 続きを読む

【書評】社会の酷さを訴え、我々の「命」を問う
 解説:辛淑玉(人材育成コンサルタント)

『バカだけど社会のことを考えてみた』(雨宮処凛著)

 この本を読んで泣いた、泣いた、泣いた。

 私は雨宮処凛が好きだ。彼女の生き方にはウソがない。等身大で世の中に向き合う姿はいつもキラキラ輝いていた。彼女は自分の言葉で、この社会が最も女に許そうとしない「意志」を持って語っている。 続きを読む