【書評】作家とお笑い芸人の対話
 解説:本房 歩(ライター)

『人生にムダなことはひとつもない』(佐藤優/ナイツ著)

「人生と信仰」を語る

 作家の佐藤優氏と、お笑い芸人「ナイツ」の土屋伸之・塙宣之の両氏という、かなり異色な取り合わせの鼎談である。
 今さら記すまでもないが、佐藤氏は外務省で在ロシア日本大使館勤務ののち国際情報局で主任分析官を務め、2002年にいわゆる鈴木宗男事件に連座するなどして逮捕・起訴された(13年執行猶予満了)。
 この捜査の内幕を綴った著書『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』で、05年に第59回毎日出版文化賞特別賞を受賞。以降、作家として驚異的な勢いで著作を出し続けている。 続きを読む

【書評】生命に対する祈りであり、賛歌
 解説:茂木健一郎(脳科学者)

『春の消息』(柳 美里・佐藤弘夫 著 写真 宍戸清孝)

 人は出会い、そして別れる。この世との、そして愛しき人々との最後の別れが「死」である。

 人間は2度死ぬという。1度は生命が尽きた時。そして、2度目はその人を思い出す人がいなくなってしまった時。

『春の消息』を読みながら、そんな出会いと別れのふしぎさ、生命のかけがえのなさについて考えていた。 続きを読む

【書評】インテリジェンスの巨匠が世界を読み解く
 解説:金惠京(日本大学危機管理学部准教授)

『独裁の宴──世界の歪みを読み解く』(手嶋龍一/佐藤 優 著)

 本書は2017年の国内外の動向について、インテリジェンスの巨匠と称される佐藤優氏と手嶋龍一氏が「独裁」という切り口を軸に行った対談をまとめた好著である。昨年はトランプ大統領の就任、北朝鮮によるミサイル実験・核実験など、国際的な危機を誘発させる事象が相次いだ。 続きを読む

【書評】資本主義から〝価値主義〟の時代へ
 解説:松田 明(フリーライター)

『お金2.0』(佐藤航陽著)

お金にはならない価値

 2017年11月に刊行されるや、ベストセラーとして注目を集めている一冊。
 著者の佐藤航陽(さとう・かつあき)氏は1986年生まれ。早稲田大学在学中だった06年に株式会社メタップスを創業。15年には東証マザーズに上場し、年商100億円を上回るグローバル企業に成長させた。 続きを読む

【書評】「こざかしさ」の対極にある生の希望
 解説:湯浅 誠(社会活動家/法政大学教授)

『ありったけの春』(茂木健一郎 著)

 5歳にあこがれる54歳。この本から受けるのは、茂木さんのそんな本質だ。

 初々しさや純真さへの郷愁(ノスタルジー)もあるが、それだけではない。肩書も役職もなく、その刹那に没頭する裸一貫の「今、ここ」に対する敬意と慈しみが、そのあこがれを支えている。大人にとっても自立とはそのようなものだし、そのようであるべきだという考えが、そのあこがれを支えている。 続きを読む