【書評】Jポップと哲学者たちの間に「補助線」を引く
 解説:茂木健一郎(脳科学者)

『Jポップで考える哲学――自分を問い直すための15曲』(戸谷洋志著)

 人間は、ふしぎな存在だ。立場、年齢、性別に関係なく、豊かな感情を持ち、よりよく生きたい、という意欲を持つ。
 私たちは、世界を、つい、別々の小世界に分けて考えがちだ。そして、それぞれの部分に、異なる人間が住んでいると思ってしまう。しかし、本当は、世の中には、一つの「人間」が住んでいるだけだ。 続きを読む

【書評】『GRIT やり抜く力』――話題のベストセラーを読む
 解説:東 晋平(ジャーナリスト/編集者)

『やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』(アンジェラ・ダックワース著/神崎朗子訳)

大事なことは「才能」ではなく「GRIT」

 「GRIT(グリット)」という言葉は、「レジリエンス(折れない心、復元力)」などとともに、近年の米国教育界、さらにビジネスやスポーツ界で重要視されてきた。GRITは歯をギリギリと噛みしめる音の擬音語で、まさに「やり抜く力」を意味している。 続きを読む

【書評】冷徹な社会で凍える人々の心を火照らせる一冊
 解説:石井光太(作家)

『生きづらい世を生き抜く作法』(雨宮処凛著)

 優れた作家の文章は、常にやさしい。自分を見てくれて、わかってくれて、言葉をかけてくれる。だから、読者にとって作家は、最大の理解者になりえるのだ。
 現代における雨宮処凛という作家は、きっとそんな存在なんだと思う。 続きを読む

【書評】現代の「闇」――子どもの虐待に迫る
 解説:雨宮処凛(作家)

『「鬼畜」の家――わが子を殺す親たち』(石井光太著)

 親が子どもを虐待して死なせる――。そんな事件を耳にするたびに、やるせない思いに包まれる。厚生労働省の調査によれば、2013年度に虐待で死亡した児童は69人。しかし、日本小児科学会の「子どもの死亡登録・検証委員会」は、実数をその3~5倍と推計しているという。 続きを読む

【書評】不思議な動物・猫を通して織り成す生命の物語
 解説:佐藤 優(作家/元外務省主任分析官)

『ねこのおうち』(柳美里著)

 猫は、プラスの方向であれ、マイナスの方向であれ、人間の感情を刺激する不思議な動物だ。柳氏は、細い糸でつながる四つの物語をみごとにまとめて感動的な一つの作品に仕上げている。熟練した腕の小説家にしかできない構成だ。 続きを読む