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良識的な中間層の声を、いかに政治に反映させるか――【書評】『21世紀の自由論』(佐々木俊尚著)
 解説:青山樹人(ライター)

『21世紀の自由論:「優しいリアリズム」の時代へ』(佐々木俊尚著)

ヨーロッパの普遍主義の終り

 話題の一書である。
 著者の佐々木俊尚氏については、今さら多くを説明するまでもないだろう。毎日新聞記者からフリージャーナリストに転じ、ITと社会の相互作用と変容をテーマに多彩な言論活動を続けてこられた。『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『キュレーションの時代』(ちくま新書)など、今という時代の姿を見事に言語化してみせた著作は読んだ人も多いはずだ。 続きを読む

【書評】芸術に触れる喜び、生きる喜びがここにある
 解説:町田 康(小説家)

『東京藝大物語』(茂木健一郎著)

 うどん屋になろうと思っている人とうどん屋とではどちらがよりうどん屋か。というと、そりゃ当然、うどん屋の方がうどん屋でしょう、と思う。けれども、うどん屋になろうと思っている人とうどん屋とではどちらがよりうどんを追求しているか。 続きを読む

【書評】夫婦の理想的な関係とは――考えるヒントとなる一書
 解説:佐々木俊尚(ジャーナリスト)

『主夫と生活』(マイク・マグレデイ著/伊丹十三訳)

 ニューヨークの新聞社に勤務している40歳の著名コラムニストがある日、仕事をすべて辞めてしまって専業主夫(ハウスハズバンド)になった。それから1年間の、主夫生活の苦闘と発見をつづった非常に面白いノンフィクションである。

 実はこの本が書かれたのは、1975年のことだ。83年になって、映画監督で俳優、名エッセイストでもあった故伊丹十三が翻訳し、日本語版が刊行された。本書はその復刻版である。 続きを読む

【書評】「ただ生きる」という原点に立ち返る
 解説:イケダハヤト(プロブロガー)

『仔猫の肉球』(雨宮処凛著)

 自慢めいた話に聞こえてしまい恐縮ですが、ぼくは28歳にしては、まぁ、よくやっている方だと思います。気づけば幼少期からの夢だった物書きになり、文章のみで十分に生計が立っています(ブログでも公開していますが、売り上げで700万円程度を、文筆業から得ています)。 続きを読む

【書評】経済学と障害学の対話から生まれた新しい研究成果
 解説:駒崎弘樹(認定NPO法人フローレンス代表理事)

『障害を問い直す』(松井彰彦・川島 聡・長瀬 修編著)

 眼鏡やコンタクトレンズをつけているだけで、あなたは障害者だ、と言われたら、おかしなことを、と思うだろう。たしかに現代では眼鏡やコンタクトがあるので、日常生活に支障はないが、これが鎌倉時代ならどうであったか。おそらく盲者として周囲に扱われただろう。おかしな話だ。 続きを読む