タイトルには「14歳からわかる」とあるが、内容は決して子どもに向けたものではない。大人でも普通に知らない生活保護の実態を、長く貧困の現場で、直接さまざまな立場の人たちと関わってきた著者が、14歳が読んでもわかるように噛み砕きながら論じている。
噛み砕いているといっても、内容は決してやさしいものではない。冒頭に描かれるのは、貧困と障害を負った妹を抱えながら奮闘するも、十分な社会保障を受けられず共に部屋で亡くなる姉妹の悲しく重苦しい現実である。
一方で、親身になって相談してくれる福祉事務所や支援団体に巡りあい、生活保護を受けながら人生を地道に立て直していく人たちがいる。日本の生活保護は決して必要十分とは言えないが、それでも受給できる人にとっては貴重な生活の支えになる。がんばれ福祉事務所。がんばれ支援団体。
しかし、それではダメだ。
福祉事務所や支援団体ががんばって、かわいそうな人を救っている現状ではダメなのだ。
本書の中に「『かわいそうだから救済する』と『自己責任だから仕方ないは紙一重』」という言葉が出てくる。これを現状に当てはめれば、誠実な福祉事務所や支援団体に相談に行ったら人生を立て直せて、不誠実なところなら真っ当な保護も受けられず餓死して死ぬ。生死が紙一重で分かれる社会保障のシステムは下の下だ。社会保障はすべての人間の生を確実に守れるシステムでなければならない。
僕達には、日本の生活保護が諸外国と比べてボロボロであることを恥じながら、同時にどのようにすれば、より多くの人の命を守ることができる社会保障を実現できるのかを考える義務がある。そのためのヒントは本書の中にふんだんに書かれている。