最初に、戦争体験者の証言を記録するという崇高なる活動に取り組まれている著者の久山忍氏に深く敬意を表さなければならない。
じつを申せば私は戦後67年余を戦争体験者から生の体験を聞き、これを記録し、戦争の真実を後世に残したいと考えつつ生きてきた。旧制中学、新制高校の頃から多くの戦争体験者から話を聞いた。終戦から数年後に大学に入学して以後もこの活動を続けた。
編集者になってからは、戦地の体験者を訪ね歩いたが、真の戦場体験者から手記をいただくことはできなかった。政治評論を専門的に行うようになってからも努力は続けたが果たすことができなかった。本書を読んだとき、私は私ができなかったことを実現した久山忍氏に深い尊敬の念を抱いた。
本書は『東部ニューギニア戦線 鬼哭の戦場』の続編である。著者は『西部ニューギニア戦線 極限の戦場』の「あとがき」に書いている。
私が垣間見た西部ニューギニア戦線は、兵士たちの怨嗟の声に満ちていた。その恨みの声は敵にむけられたものではなく、日本軍の指揮官たちにむけられたものであった。西部ニューギニアでは、無用な行軍、無意味な作戦、無慈悲な命令によって死んだ兵たちがおびただしかった。
証言者の1人である松浦豊さんはこう述べている。
ニューギニア戦線の悲劇は、体験した者でなければわからないだろう。しかし、たとえわかっても、わからなくても、もう二度とあのような残酷な戦争はくり返してはならない。つぎの世代をになう子孫には、絶対にあんな悲惨な思いをさせたくないと切に願う。
本書には戦争の真実が記録されている。戦場は地獄である。この地獄の実態が赤裸々に描かれている。本書は真実の平和教育の教科書であると私は思う。われわれ日本人は戦後67年余を経て、真の平和の教科書を手にすることができたのである。