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【書評】「こざかしさ」の対極にある生の希望
 解説:湯浅 誠(社会活動家/法政大学教授)

『ありったけの春』(茂木健一郎 著)

 5歳にあこがれる54歳。この本から受けるのは、茂木さんのそんな本質だ。

 初々しさや純真さへの郷愁(ノスタルジー)もあるが、それだけではない。肩書も役職もなく、その刹那に没頭する裸一貫の「今、ここ」に対する敬意と慈しみが、そのあこがれを支えている。大人にとっても自立とはそのようなものだし、そのようであるべきだという考えが、そのあこがれを支えている。 続きを読む

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【書評】冷静な筆致で綴られたルポルタージュ
 解説:松田 明(フリーライター)

『トランプ時代のアメリカを歩く』(聖教新聞外信部 編)

想定外の大統領選挙

 私たちは単なる想定外の〝悪夢〟を見ているのか。それとも、冷静に対峙すべき〝新しい時代の課題〟と向き合わされているのか。
 2016年11月8日。米国はもとより日本を含む諸外国のメディアの大勢は、史上初の女性大統領が米国に誕生することを確信し、その瞬間を固唾をのんで見守っていた。
聖教新聞外信部副部長の光澤昭義記者も、民主党ヒラリー陣営の集まるニューヨークのジェイコブ・ジャビッツ・コンベンション・センターで、その時を待っていた1人である。
 だが、開票が進むにつれ、場内は異様な空気に包まれた。ホワイトハウスの第45代の主人となったのは、共和党のドナルド・トランプだった。 続きを読む

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【書評】戦争拡大を最後まで防ごうとした陸軍軍人
 解説:石井光太(作家)

『多田駿伝』(岩井秀一郎著)

 もしあの戦争がなかったなら――。
 戦争経験者だけでなく、今の若い人も、その思いは同じだ。本書の著者は、30歳の在野の研究者・岩井秀一郎。
 大学で歴史学を学ぶ前、岩井は日本が戦争をはじめたきっかけとして、漠然と「海軍は慎重派(善玉)」「陸軍は強硬派(悪玉)」という捉え方をしていたそうだ。
 だが、多田駿(はやお)陸軍大将の存在を知った時、その固定観念が音を立てて崩れ去った。多田こそが、「戦争拡大を最後まで防ごうとした陸軍軍人」だったのである。 続きを読む

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「反戦出版」書評シリーズ③ 『未来につなぐ平和のウムイ』
 解説:柳原滋雄(ジャーナリスト)

『未来につなぐ平和のウムイ』(創価学会沖縄青年部 編)

犠牲者20万人の「沖縄戦」の実態

 県民の4分の1が犠牲になったとされる「沖縄戦」――。その凄まじい局地戦において犠牲になったのは、多くが民間人の女性や子どもたちだった。本書は2016年に発刊された、当時、成人に満たなかった女性を中心とする14人による戦争体験集。
 沖縄がこの戦争の本格的な舞台となったのは1945年3月。米軍が本島への大規模攻撃を開始し、6月23日に牛島司令官が自決するまで、苛烈な戦闘が続いた(現在、6月23日は「沖縄慰霊の日」となっている)。 続きを読む

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【書評】『評伝 牧口常三郎』――〝創価教育の父〟の実像に迫る
 解説:青山樹人(ライター)

『評伝 牧口常三郎 創価教育の源流 第一部』(「創価教育の源流」編纂委員会 編)

獄中に閉じた生涯

 生前に功成り名を遂げ、あるいは権勢を誇ったものの、没して時間を経るごとに世の記憶から消えていく人物というのは、実際あまりにも多い。
 反対に、ひそやかに生涯を終えながら、時代と共にその生きた軌跡と残された思想が燦然と輝きを帯び、世界に大きな影響を与えていく人間が、稀に存在する。
 牧口常三郎は、まぎれもなくそうした稀有な1人であろう。 続きを読む