復興支援・防災教育・地域貢献を柱に、47都道府県をつなぐ若者育成を目指す学生発の独創的な運動が始まった。
震災の記憶を未来に生かす
私たち「助けあいジャパン」は、東日本大震災を機に生まれた公益社団法人です。被災地で求められる迅速かつ正確な情報は、被災者や支援者にとって、水や食料と同じくらい大切だという価値観のもと、震災直後から活動を続けてきました。現在では被災3県(岩手・宮城・福島)の自治体や、観光庁・内閣府防災などとも連携しながら復興支援に取り組んでいます。
「きっかけバス47」は、助けあいジャパンが全国で展開している復興支援プロジェクトの1つです。2013年7月にプロジェクトを立ち上げ、内閣府の「被災者支援活動」の認定を受け、観光庁と連携を図りながら活動を続けています。
このプロジェクトは、震災から丸3年を迎える2014年3月11日までに、全国47都道府県から40人乗りのバスを1台ずつ出発させ、ボランティアに取り組む学生合計2000人を被災3県へと派遣する計画です。
人の行き来が少ない真冬の時期に、学生ボランティアを派遣することで震災復興を盛り上げます。また、宿泊や消費活動を通じて地域経済の振興に役立ち、同時に被災者の方々とふれあうことで、日ごろの防災の重要性を学びます。
そして、2泊4日(1泊は車中泊)のボランティア体験を地元へと持ち帰り、友人や家族や地域の人びとに伝えることで、震災の風評・風化を防止するとともに、地域の防災意識向上につなげます。
その上で「きっかけバス」の最終的な目標は、東日本大震災の痛ましい経験を未来に生かすことです。今回のプロジェクトに参加した若者を、将来の地域防災を担うリーダーにしていきたいと願っているのです。
今後発生が懸念される「南海トラフ巨大地震」では、被災エリアが東海地方から九州地方までの広範囲に及び、被害規模は東日本大震災の約10倍にも達すると考えられています。少しでも震災被害を軽減するためには、やはり中長期的な展望に立った地域防災を全国的に推進していく必要があると思います。
そのためには、国や行政のみに依存しないボランティア・ベースの運動を育てていくべきだと思います。つまり、いざというときにリーダーシップを発揮し、さまざまな団体や人びとと連携を図る若者を地域全体で育てていく必要があるのです。
きっかけバスでは、全国都道府県に1人ずつの学生リーダーと、そのリーダーを支える40人の仲間を育てています。学生による「横の連帯」を築くことができれば、仮に南海トラフのような巨大地震が10を超える広範囲の自治体を襲ったとしても、残り37都道府県から救援活動に駆けつけることができます。
きっかけバスが目指しているのは、復興支援や防災を切り口とした日本の若者の連帯とネットワーク化です。ぜひこの運動を大きなムーブメントに育てていきたいと考えています。
徹して意見をぶつけあう
昨年(2013年)9月、きっかけバスに先立つ形で3泊4日の「リーダー研修合宿」を行いました。インターネット上で寄付を募り、全国から47人の学生リーダーが集まって、被災地へと向かったのです。
いま振り返っても、合宿は本当に大変でした。全国各地から集まった学生たちは、それぞれの復興支援に対する思いも異なっており、お互いの意見を伝え合うたびに激論が交わされていました。
たとえば、きっかけバスへの参加理由1つをとっても、「とりあえず被災地に行って誰かの役に立ちたい」と思う学生もいれば、被災地出身で「そんな安易な気持ちで被災地に来ないでほしい」と感じる学生もいます。意見を交わすたびにお互いの考え方の違いが浮き彫りになっていったのです。
それでも私たちは徹底してダイアログ(対話)に取り組みました。夕食後、5~6人1組のグループをつくり、その日ごとのテーマを定めてお互いの復興への思いを語り合いました。お互いの違いを受け入れ、心の奥底にある気持ちを見せ合い、全員の力を結集していかなければ、私たちの計画は到底進まないと考えていたためです。
不思議なことに、参加者の間で意見の衝突が起こった分だけ、「自分はなぜ復興支援に関わろうとしているのか」といった意義づけが深まったようです。またお互いの考え方の違いを尊重していく中で、それぞれの得意なことや被災地で取り組みたいことが明らかになり、アイデアが次々と生まれてきました。
3泊4日の研修合宿が終わり、東京の本部に戻ってくると、多くのリーダーたちがその場に残り、今後のプロジェクトをどう展開していくのかを真剣に話し合っていました。徹底したダイアログがお互いの信頼の絆を深めてくれたのだと感じています。
人とお金が被災地に向かう「仕組み」をつくりたい
現在、私たちが抱えている最も大きな課題は、みなさまからの寄付をどう募っていくかです。47都道府県からきっかけバスを出すには、約1億5000万円の予算が必要になります。
ところが2月現在、寄付の目標達成率は1割程度にとどまっています。各都道府県のリーダーたちも、仲間とともに寄付を募り、すでに岐阜・栃木・兵庫・大阪などから順次バスを出していますが、それでも全体の目標達成率で見ると厳しい状況にあります。
原因はさまざまですが、いちばん大きな理由は、人とお金をつなぐ「仕組み」の大切さが世の中に伝わっていないことにあると感じています。私たちが活動を続けていると、「1億円超もの予算をかけるより、集めたお金を被災地に寄付したらいいのではないか」と言われることがあります。
しかし、お金のことのみを考えるのであれば、私たちが寄付をしなくとも十分な復興予算が行政によって確保されています。問題は、復興予算を生かしきる「仕組み」が被災地にはないことなのです。
たとえば宮城県名取市の閖上地区では、津波被害を避けるために地域全体の高台移転が決まっています。すでに予算が確保され、資材も集まり、盛土も用意されています。しかし作業に携わる熟練工がいないのです。
全国各地で復興関連の公共工事が発生していることに加え、防災・減災に対応するための社会資本の整備なども影響し、全国的に建設作業員が不足しています。
さらに行政は、単年度予算で復興事業を行うため、仮設住宅の整備など成果の見えやすいところに予算を振り向けがちです。しかし被災地支援は、ハード面だけではなくソフト面でのサポートも非常に大切です。
被災地の子どもたちの学習支援などは、すぐには成果が出なくとも、中長期的な震災復興を考える上では欠かすことのできない重要な支援活動です。だからこそ、私たちのような民間団体が、国や行政のカバーしきれない分野に人員や予算を振り向ける「仕組み」をつくるべきなのです。きっかけバスプロジェクトも、その「仕組み」の1つだと思って取り組んでいます。
すでに向かったバスの先には、被災者の方々と学生の笑顔の交流がありました。私たちは東北に笑顔を取り戻すことで、震災で亡くなられた方々への追悼としたいと考えています。
笑顔を取り戻すためには、被災者・支援者双方が活動に楽しみを覚え、明日への希望を抱けるような明るい運動にしていかなければと思っています。これからも若者の力を結集すべく、頑張っていきます。
<月刊誌『第三文明』2014年4月号より転載>
<寄付の仕方>
下記銀行口座までお振込ください。①「ゆうちょ銀行」から「ゆうちょ銀行」へのお振込
口座記号 00180-6
口座番号 386517
加入者名 公益社団法人助けあいジャパン②「銀行」から「りそな銀行」へのお振込
銀行名 りそな銀行
支店名 麻布支店
口座名 公益社団法人 助けあいジャパン
預金種目 普通
口座番号 1741244※お振込み頂いた後、下記お問い合わせ先までご一報ください
※インターネットサイトではクレジットカードによる決済も可能です<お問い合わせ先>
助けあいジャパン「きっかけバス47」係URL:http://kikkakebus.tasukeaijapan.jp
住所:東京都港区麻布十番1-10-10 ジュールA 8F
TEL:03-3583-2627
Mail:tj.kikkakebus@gmail.com<寄付金額の40%が還元されます>
きっかけバス47は内閣府の被災者支援活動に認定され、税制の優遇措置を受けられます。個人の場合は寄付金額の約40%が確定申告で戻り、法人の場合は損金算入が認められます。