ストーリーを知っている映画を見つける
日本の学生は、中学、高校、大学と10年近くも英語を学びます。その中の何割の人が英語を話し理解できるようになるのでしょうか。少ないですね。
英語を母国語とする者が日常生活では使わない難しい単語を多く覚え、文法を重視する英語教育でいいのか疑問があります。受験勉強のためであれば、英語は楽しくないはずだし、楽しくなければ身に付くはずがありません。
言葉を覚えるには、実際に使ってみることがいちばんいい。机に向かって単語と文法を脳に記憶させるだけでは、いずれ忘れてしまいます。これは時間の無駄です。覚えたことをアウトプットすることで、しっかりと記憶されるのです。言葉は使わなければ覚えられません。
現在、子どもたちに英語を教えています。子どもは純粋ですので、楽しいことは積極的に応えてくれますが、面白くないとはっきりと「つまらない!」と主張します。歌、ゲーム、多様な表現を使い、楽しみながら英語で遊ぶトレーニングを行っています。楽しく学ぶことは、驚くほど効果的な勉強法なのです。
子どもと同じことを大人にするのは無理がありますが、少し工夫するだけでも英語力アップにつながります。たとえば、ビデオでハリウッド映画を見るとき、日本語の字幕の文字ばかりを追っかけてしまい、俳優の声は右の耳から左の耳へと流れてしまうだけ。これだと勉強にはなりません。
私が日本語の勉強のためにしたのは、子どものころから慣れ親しんで、ストーリーを記憶している「ピーターパン」や「ダンボ」のような、内容が複雑ではない映画を教材としました。日本語吹き替えで見て、次に英語の字幕で見て言葉を確認しました。その後に字幕を消し、もう1度日本語吹き替えで見ると、話している日本語が少しずつ理解できるようになっていきます。これは英語学習でも同じ効果があるはずです。まずはストーリーを記憶していて、かつ内容が難しくない、海外の映画を見つけてみましょう。
英語の苦手意識を会話とツイッターで克服
日本人の多くが、英語に対し苦手意識をもつのは、学校での勉強の「辛さ」があるからではないでしょうか。英語に慣れれば苦手意識も抵抗感もなくなります。だから好きな分野、興味のあることから始めればいい。映画でも音楽でもいいのです。脳を喜ばせないといけません。脳は喜んでいる時に記憶力が増すのです。英語の勉強をするのに「辛さ」はいりません。
近くに英語を話す外国人がいれば、積極的に話しかけてください。初対面の場合など話しかけにくいものですが、それでも勇気を出してチャレンジしましょう。話しかけられて嫌な顔をされることはないと思います。日本人は、フランクに話しかけるのが不得意なようです。それは失敗を恐れるからではないでしょうか。
間違った英語でもいいのです。ドンドン話して失敗することは、とても大切なことです。そこで誤りに気付くのですから上達は早い。
心がけるのは途切れない会話です。そのために英語を学ぼうとすればいいでしょう。会話ができると思えば楽しくなると思います。私も日本に来た直後は、とんでもない日本語を使っていました。後で赤面してしまうことも1度や2度ではありません。日本語の難しい表現は、失敗を繰り返すことで覚えていきました。
間違った言葉でも一生懸命に話していけば、相手も一生懸命に聞いてくれます。これは日本だけでなく世界中どこへ行っても同じです。だから、気にしないで話せばいい。英語を母国語とする人は、英語で外国人に話しかけられたら、わかるまで聞く義務があるとまで思ってもいいのではないでしょうか。「通じなかったらどうしよう」という気持ちを抱くのが日本人の悪い癖です。失敗を恐れることは自分で壁をつくっていることなのです。
みなさん発音も気にしますね。これも気にする必要はありません。たとえばインド人が話す英語は、インド独自の発音があり聞き取りにくいのですが、彼らは気にしません。でも立派な英語です。そのぐらいの気構えが日本人には必要です。もっと自信をもちましょう。
もうひとつ、英語の上達で利用できるのがツイッターです。好きな外国人をフォローすればいいのです。直接、話しかけているのと同じ効果があります。日本語だと140文字はかなり書けるのですが、英語だと本当に短文になります。コンパクトでダイレクトであるだけでなく暖昧さもない。英語を勉強するにはわかりやすいツールです。書くことも話すことも同じ能力です。ツイッターで意思が伝われば自信につながるでしょう。外国人の友達ができたのと同じです。
日本の良さを英語で世界に伝えよう
2020年に東京でオリンピック・パラリンピックが開催されることが決まりました。
私は日本での滞在が10年以上になります。日本の「優しさ」や「温かさ」という良さを知るにつれ、これらの多くのことをなぜもっと世界に伝えないのかと不思議に思います。世界はまだ本当の日本の良さを知りません。できるだけ多くの日本人が、できるだけ多くのことを発信すれば、世界中の人々が感動するはずです。ただ、それは英語でなければなりません。だから、生きた英語を学ぶべきだと思います。
7年後には、多くの外国人が日本にやってきます。道を聞かれたり、話しかけられたりすることがあるかもしれません。その時の対応が、日本人の評価として世界に伝わることだってあるでしょう。
そこで、冷たい表現ではなく、ぜひ日本人の「優しさ」や「温かさ」が伝わる表現で英語を使ってほしいのです。そのように対応する日本人が多くいれば、必ず日本人は世界の中で高く評価されると思います。
(ブレンダン・ウィムセットさん監修の「英語の万能表現を覚えてみよう!」はページ下↓にあります!)
<月刊誌『第三文明』2013年12月号より転載>
関連記事:
<シリーズ 今から英語を始めよう①> 語学の目的は、豊かな人間関係を築くこと――ジャパリッシュのススメ(同志社大学大学院教授 渡辺武達)
英語の万能表現を覚えてみよう!
これで「優しさ」も伝わるはず!
(表現1)May I (have) ~ please?
“What’s your name?“は通じますが少し冷たい感じがします。
もっと了寧に言うと”May I have your name please?“が親しみやすいです。
許可を頼むとき”Can I“より”May I“のほうが丁寧です。
“May I have“は「お願いできますか」という意味です。<例>
May I have a refill please? (おかわりしてもいいですか) *飲み物の場合。
食べ物の場合は”May I have seconds please?“と言います。May I have a receipt please? (領収書をもらえますか)
May I have a word please? (お話ししてもいいですか)
May I take a photo please? (写真を撮ってもいいですか)
(表現2)I’m sorry, but……
頼み事を断るときや力になれないときに”No, I can’t.“より丁寧な言い方です。
Can you come tomorrow? (明日来られますか)
→No, I can’t.←冷たい表現
→I’m sorry, but I can’t. ←丁寧ないい表現
(申し訳ありませんが行けません)<例>
Can you tell me where the station is? (駅はどこにありますか)
→I’m sorry, but I don’t know. (申し訳ありませんがわかりません)Can I have a ticket? (チケットお願いします)
→I’m sorry, but we’re sold out. (申し訳ありませんが売り切れです)Can you give me a ride? (送ってくれますか)
→I’m sorry, but I can’t drive. (申し訳ありませんが運転できません)(表現3)Would you like (to)……?
“Do you want……?“(ほしいですか・しませんか)は
わかりやすいかもしれませんが、かなりダイレクトなニュアンスでもあります。
“Would you like…?“を使ったほうが親切な表現なのでいいです。<例>
Would you like to see Mount Fuji? (富士山を見に行きませんか)
Would you like a drink? (お飲みものはいかがですか)
Would you like to go see a baseball game? (野球の試合を見に行きませんか)
Would you like to come over for dinner? (夕飯を食べに来ませんか)
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