日本における宗教理解の浅薄さ
2022年7月、安倍晋三元総理が凶弾によって倒れた。逮捕された容疑者の犯行動機が旧統一教会への恨みであったことから、政治と宗教の問題がにわかに注目を浴び、大きな問題としてとりあげられた。ワイドショーでは旧統一教会と政治家の関係性を追求し、そこにジャーナリストや研究者が登場し、さまざまな議論を繰り広げた。また国会でもこの問題がとりあげられた。
しかし、それらの発言には時局迎合的なものが多く、国家と宗教という問題を真面目にとりあげ議論を深めていこうとする人は、ほんの一握りでしかない。
本書は副題に「国家は信仰をどこまで支配できるのか」とある通り、国家と宗教の関係性というテーマを真正面からとりあげている。
同じ問題をあつかった本がこれまで出版されてきたが、憲法や法解釈の観点から論じたものが大半を占めていた。しかし本書は哲学という観点から問題の本質に迫ろうとする画期的な論考といえるだろう。 続きを読む