死のジレンマとは
著者はなかなかユニークな経歴の持ち主だ。救急車で人命救助の現場に向かう救命救急士だったが、職場の上司の勧めに従って医学大学へ通いER(救急室、救急外来)の医師となった。現在は、ICU(集中治療室)の医師であり、またジャーナリストでもある。
本書は、これまで著者が悩んできた問題を解決するまでの過程を、医学の専門知識のない読者が理解できる文章で綴ったものである。多くの専門家へのインタヴューで構成されている。
死のジレンマとは私たち医者が、いずれは必ず訪れる死を短期的に阻もうとしてテクノロジーを見境なく使った結果であると同時に、医療行為や死のプロセスから人間性を奪ってきたテクノロジーへの依存に対処し損ねたことにも起因している面がある。(本書80ページ)
著者の心を悩ませてきた問題とは、本書で「死のジレンマ」「グレーゾーン」と言われているものだ。 続きを読む