アメリカの作家カート・ヴォネガットが、こう語った。
芸術に果たしてどんな効用があるのか
わたしが思いつく最も肯定的な理念は、〈坑内カナリア芸術論〉と勝手に名づけているものです。芸術家は非常に感受性が強いからこそ社会にとって有用だ、という理論です。彼らは超高感度ですから、有毒ガスが充満している坑内のカナリアよろしく、より屈強な人々が多少とも危険を察知するずっと前に気絶してしまいます
かつて石炭を掘るとき、工夫たちは有毒ガスから身を守るためにカナリアを連れて行った、といわれる。ヴォネガットは芸術家を、そのカナリアにたとえている。この場合の芸術には、もちろん文学も含まれる。
ヴォネガットがこの講演を行ったのは1969年。もう、半世紀も前から文学・芸術などは、役に立たないという批判があったわけだ。 続きを読む