ヘイトスピーチ」タグアーカイブ

連載エッセー「本の楽園」 第29回 生きるための詩

作家
村上 政彦

 僕は9歳のときに父を喪った。その後は母と祖母に育てられた。
 母は、酒場で「ママさん」と呼ばれる勤めをしていた。だいたい昼頃まで寝ていて、夕刻に近くの銭湯へ行き、きれいに化粧をして着物を着る。三面鏡の前で、ぽんと帯を叩いて出かけて行く。帰るのは深夜である。

 家族というのは不思議なもので、母と祖母は特に話し合ったわけでもないだろうが、いつか母が「父」になり、祖母が「母」になった。 続きを読む

仕事・家族・教育の関係を結びなおし 誰もが幸福になれる社会を

東京大学教授
本田由紀

 とどまるところを知らない格差の広がりや、若者の生きづらさの原因はいったいどこにあるのか。教育社会学の視点で社会問題に向き合う本田氏に話を聞いた。 続きを読む

2014総選挙――国民は賢明な判断を下したか

ライター
青山樹人

右傾化を拒絶した有権者の判断

 第47回衆議院議員総選挙が終わった。
 翌朝、読売新聞は「自公圧勝325議席」、産経新聞は「自公3分の2超 圧勝」と大見出しを打ち、朝日新聞は「自公大勝 3分の2維持」、毎日新聞だけは「自民微減291議席」と出した。テレビも各局ほぼ同じように「与党圧勝」というトーンで報じたように思われる。 続きを読む

ヘイトクライムの根を考える――新しい物語の必要性

ライター
青山樹人

日本に向けられた国際社会の厳しい目

 この夏、国連から日本政府に対し、相次いで〝勧告〟がなされた。
 7月には、拷問禁止・表現の自由などに関する国連人権規約委員会が、ヘイトスピーチなど人種や国籍差別を助長する街宣活動を禁止し、犯罪者を処罰するよう日本政府に勧告した。
 さらに8月には国連人種差別撤廃委員会が、ヘイトスピーチを行う個人や団体については、捜査をし、場合によっては起訴すべきであり、法整備を急ぐべきだと重ねて勧告した。 続きを読む

「嫌中嫌韓」ブームを読み解く

ジャーナリスト
柳原滋雄

売れる本ばかり追う不況の出版界

「嫌中嫌韓」あるいは「嫌中憎韓」といったフレーズが、出版界でもしばしば耳にされるようになってきている。
 いわゆる「嫌中嫌韓本」は、日本の隣国である韓国や中国を非難する内容の書籍のことで、こうした書籍が同時に多くベストセラーに入るようになったことで注目されるようになった。 続きを読む