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連載エッセー「本の楽園」 第28回 君子の酒食

作家
村上 政彦

 僕は、グルマン(健啖家)ではあるが、いま流行のグルメ(美食家)ではない。知る人ぞ知るレストランに何年も先の予約を入れたり、旨いものを求めて辺境に足を運んだりすることはない。
 ジャンクフードも好きだし、小腹が空けばスーパーの沢庵でお茶漬けもかきこむ。いたって普通の食生活を送っている。ただ、食べるのは好きで、旨いものには必ず手が出るし、TVのグルメ番組などは好んで見る。
 実は、本でも、食について書かれたものは読んでいて愉しい。もっとも、こっちのほうは、文章の好悪がはっきりしているので、グルメといえるかもしれない。不味い文章は、まったく食指が動かないのだ。 続きを読む