インド」タグアーカイブ

臨終をめぐる家族の物語——インド映画『ガンジスに還る』

フリーライター
藤澤 正

ボリウッドといえば「歌」や「踊り」?

 父親の臨終をめぐる家族の物語『ガンジスに還る』(英題:HOTEL SALVATION/2016年/インド)が、まもなく日本でも公開される。
「インド映画」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。「歌」や「踊り」が登場するお決まりの〝ボリウッド〟を連想する人も多いのではないか。 続きを読む

世界最大の叙事詩――書評『マハーバーラタ』

ライター
本房 歩

壮大な空想の戦闘記

 古代インドで成立した「マハーバーラタ」は、10万余の対句から構成され、世界最大の叙事詩と言われている。
 古代ギリシャの「イーリアス」「オデュッセイア」と共に〝世界三大叙事詩〟と称えられ、インドにおいては「ラーマーヤナ」と並ぶ二大叙事詩とされてきた。

 物語は、パーンドゥ家とクル家の王子たちによるバーラタ王朝内の争いを軸に、数多くの人物の性格描写や事件の記述を通じて、人間の強さと弱さ、高貴さと卑劣さ、美しさと醜さなど、人間にまつわる古くて新しい普遍的なテーマを展開させている。(第三文明選書『マハーバーラタ(上)』訳者まえがき)

 ストーリーの概要を書くだけでも何千字も費やしそうな大長編だ。とくに中盤から始まる大戦争の描写は、昔も今も人々の想像力をかき立て、強い衝撃を与えてきた。 続きを読む

書評『新たな地球文明の詩(うた)を タゴールと世界市民を語る』

ライター
青山樹人

インドを目覚めさせた「詩聖」

 およそ10年後の2020年代後半には世界一の人口に達するインド。近年、ようやく日本はインドとの間の経済交流、また安全保障を含む政治対話に、本格的に乗り出した。
 とはいえ、私たち日本社会はインドという大国をどこまで知っているのか。
 インドを理解し、語るうえでの〝肝〟ともいえる存在が、ラビンドラナート・タゴール(1861-1941)だろう。 続きを読む

日本は憲法9条の考えを世界に輸出していくべき

国際交流NGOピースボート共同代表
川崎 哲

 憲法9条は世界からどのように評価されているのか。私たちはどう向き合っていくべきか――。

日本のナショナリズムを世界が警戒

 最近の安倍政権の安全保障政策を見ていると、私はその進め方に強い危機感を感じています。
 海外でも日本の現状を心配する声をよく耳にします。昨年(2013年)7月、ピースボートでシンガポールを訪れる機会があり、そこである国際組織の先生に開口一番「安倍政権が心配です」と言われ、今年3月また同じ先生から「すごいスピードで軍事的政策が進められているが、日本は大丈夫なのか」と問われました。 続きを読む

【コラム】女性必見! 上質な〝大人の娯楽作品〟――インド映画『マダム・イン・ニューヨーク』

フリー編集者
東 晋平

お決まりのボリウッドとはひと味違う

 インドは世界一の「映画大国」だ。長編と短編を合わせて、年間に2000本近い作品が公開されている。なかでもヒンディー語映画の一大制作拠点になっているのが、アラビア海に面した西海岸の都市ムンバイ。1995年まではボンベイと呼ばれていた街で、いつの頃からかムンバイの映画産業界もしくはインド映画そのものを指して、ハリウッドをもじった「ボリウッド(Bollywood)」というネーミングが定着した。
 日本でも、1998年に公開された『踊るマハラジャ』が大ヒットとなったし、2013年も『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』が話題になっている。 続きを読む