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連載エッセー「本の楽園」 第22回 詩人の魂、または「非常時」の言葉

作家
村上 政彦

 中学生のころに立原道造めいた詩を書いていた。いや、詩らしきものといったほうがいいか。憶えているのは、つたない言葉のつらなりだ。すぐに関心が小説に移って、結局、僕は詩人にはなれなかった。
 ひとは、どのようにして詩人になるのだろうか。『我が詩的自伝 素手で焔をつかみとれ!』は、日本を代表する詩人・吉増剛造の自伝だ。誕生から現在までを自作の詩を織り込みながら語っていく。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第9回 人生を〝着崩す〟 ブコウスキーの詩

作家
村上政彦

 若いころジーンズを加工したことがある。履いたまま風呂に入って、そのまま乾かすと、体にフィットする。それを漂白剤でブリーチしたり、軽石で擦ったりして、わざとダメージを与えるのだ。当時は、それがスタイリッシュだった。いまでは店頭でダメージを施したジーンズが売られている。

 こういう衣服の着方は、〝着崩す〟という。ブコウスキーの人生を見ていると、この“着崩す”という言葉がぴったりの気がする。 続きを読む