実戦的な沖縄空手流派
沖縄空手の3大流派といえば、最も歴史の古い首里手の象徴である「しょうりん流」と、那覇手の「剛柔流」、そして「上地流」というのが定番だ。中でも上地流は沖縄に伝わった流派では年代的に最も新しく、中国拳法の要素を色濃く受け継いでいるとされる。創始者・上地完文(うえち・かんぶん 1877-1948)の名字を取って「上地流」と呼ばれる。
上地完文は20歳で福建省福州市にわたり、そこで10年以上かけて南派少林拳の達人から武術を習得した。達人レベルの技法を身に付けて沖縄に戻ったが、帰国後、完文が沖縄で空手を広めることはなかった。中国で弟子の一人が誤って人を殺めてしまった自責の念があったからといわれている。
勤務先の紡績工場(和歌山)で同僚らに請われて教えるようになった際はすでに50近い年齢になろうとしていた。当初は自分で身に付けた武術を「パンガヰヌーン拳法」と称した。
完文の2男2女の子どものうち、中学を卒業したばかりの長男・上地完英(うえち・かんえい 1911-91)を和歌山に呼び寄せ、共に稽古する日々を送る。 続きを読む