参院選2022直前チェック③――コロナ対策、与野党の明暗

ライター
松田 明

厚労省にワクチンの予算確保を促す「あきの公造」参議院議員(2020年7月参議院予算委員会)

日本の対策は他国の模範になる

 中国の武漢で広がっていた新型肺炎について、WHO(世界保健機関)が「新型ウイルスの可能性」をはじめて指摘したのが2020年1月初旬。同21日に、WHOは「ヒトからヒトへの感染が見られる」と発表した。
 この発表から参院選投票日前日の7月9日で900日となる。
 未知のウイルスに世界全体が覆われる人類史上かつてないパンデミック。各国政府は暗中模索のなかで、さまざまな対策を講じた。
 同じ東アジアでも中国は「ZEROコロナ」を掲げ、強権的なロックダウンを繰り返して早い時期に成果をあげたように見えた。
 韓国はPCR検査を徹底し、台湾はITをフル活用して、いずれも一定の成果が見られた。同じ太平洋の島国であるニュージーランドも「ZEROコロナ」政策を打ち出し、やはり高い成果をあげていた。
 これに対し、日本は憲法との兼ね合いから移動を禁止するような「ロックダウン」は採用せず、「WITHコロナ」で慎重に社会経済を回しながらワクチン接種の徹底で乗り切ってきた。 続きを読む

空手普及100年――唐手から空手へ(中)

ジャーナリスト
柳原滋雄

確定できないままの講道館演武会

 1957年に88歳で死去した沖縄出身の船越義珍(ふなこし・ぎちん 1968-1957)が、東京で空手指導したのは戦争中に大分県に疎開したおよそ2年間を除く33年の歳月である。
 逝去半年前の1956年秋、船越は産業経済新聞社から『空手道一路』という自身のエッセイ的自伝を上梓した。空手にかけた自身の生涯を綴ったものだったが、記憶のみに基づいて書いた部分が多く含まれることは指摘されてきた通りだ。
 例えば文部省主催の運動体育展覧会のため上京した肝心の1922(大正11)年のくだりも、「たしか、大正10年の末だったと思う」などと書く。信頼できる資料と照らし合わせないまま活字にしたことが明らかだ。こうした傾向はこの著作に限ったわけではない。 続きを読む

参院選2022直前チェック②――物価高対策を検証する

ライター
松田 明

実態に沿った主張はどちらなのか

 今回の参院選で有権者がもっとも関心を持っているのが「経済対策」すなわち「物価高対策」だ。
 NHKが6月24日から3日間調査したアンケートでは、「参院選で最も重視する政策課題」として43%が「経済対策」を挙げた。
 言うまでもなく、これは2月にはじまったロシアによるウクライナへの軍事侵攻によってもたらされたもの。世界規模で、原油価格や穀物価格が高騰したのだ。1月の時点で、国民の最大の関心事は「新型コロナ」だった。 続きを読む

参院選2022直前チェック①――データで検証する各党の公約

ライター
松田 明

ポピュリズムの罠

 7月10日投票の参議院議員選挙は、すでに期日前投票がはじまっている。総務省の発表では、公示からの4日間に期日前投票を済ませた人の割合は、2016の参院選と比較して19.72%増えているという。
 一方で、どの政党の候補者に投票すべきか、なかなか判断に迷っている人もいるだろう。
 SNSなどでは、さまざまなイシューについての各党の賛否を単純に「○」「×」で示したものなどが流れてくる。一見「わかりやすく」見えるが、あまり単純化された情報は、やはり眉に唾をつけておいたほうがいい。
 たとえば「選択的夫婦別姓」や「同性婚」への賛否なら答えがシンプルなので「○」か「×」でもいいだろう。しかし、「消費税率引き下げ」「最低賃金1500円以上」などとなると、そもそも設問自体が不適切だと言わざるを得ない。 続きを読む

まやかしの〝消費減税〟――無責任きわまる野党の公約

ライター
松田 明

足並みが乱れる野党

 参院選の火ぶたが切られ、連日、各党各候補の舌戦が続いている。
 今回、目立つのは野党の足並みの乱れと、攻め手を欠くゆえの無責任な〝甘い言葉〟だ。
 6月9日、日本経済新聞は次のように厳しく指摘した。

7月の参院選を前に国会と選挙の両面で野党内の足並みの乱れが目立つ。衆院本会議での内閣不信任決議案の採決でも対応は割れた。立憲民主党が提出した決議案を日本維新の会と国民民主党は与党とともに反対に回って否決した。7月10日を見込む投開票日まで残り1カ月となってもなお候補者調整は進んでいない。(「日本経済新聞電子版」6月9日

 通常国会の終盤で、立憲民主党は岸田内閣への不信任決議案を提出した。だが、同じ野党内からも国会の時間を無駄に使うパフォーマンスだと批判を浴び、同調した主要政党は日本共産党だけだった。 続きを読む