2連敗した立民と共産――参院選でも厳しい審判

ライター
松田 明

衆院選に続く2党の大敗

 7月10日に投開票がおこなわれた第26回参議院選挙は、与党の圧勝で終わった。
 自民党は単独で改選議席125の過半数となる63議席を獲得。公明党も選挙区7候補が激戦を制して全員当選を果たし、13議席を獲得した。
 一方の野党は、立憲民主党が改選23議席から大きく後退して17議席にとどまり、日本共産党も6議席から4議席へと大敗した。
 立憲民主党は獲得議席数では辛うじて野党第一党の座を保ったものの、比例区の得票数では日本維新の会に及ばなかった。日本維新の会は改選議席の6から12議席へ倍増させている。
 さらに立憲民主党は、参議院幹事長だった現職の森裕子氏が自民党の新人に敗北。小沢一郎氏のおひざ元である岩手選挙区でも、現職の木戸口英司氏が自民党の新人に敗北し、1992年以来30年ぶりに自民党が勝利した。
 また比例区でも、有田芳生氏や白眞勲氏といった現職が議席を失った。 続きを読む

芥川賞を読む 第19回『水滴』目取真俊

文筆家
水上修一

奇想天外な物語から、沖縄戦の過去と現在が浮かび上がる

目取真俊(めどるま・しゅん)著/第117回芥川賞受賞作(1997年上半期)

奇妙で強烈な印象をもたらすシーン

 第117回芥川賞を受賞したのは、目取真俊の「水滴」だった。『文学界』に掲載された原稿用紙約60枚の短編小説である。
 目取真の出身は沖縄で、作品の舞台も沖縄。114回の受賞作「豚の報い」も沖縄が舞台だったことから、選考委員の中からは「またしても沖縄か」という声もあったようだが、やはり風土的にも歴史的にも文学の題材が豊富なのだろう。
「豚の報い」もそうだが、魅力の一つは沖縄の人たちの振る舞いからにじみ出てくるおおらかさや笑いである。特に「水滴」は、悲惨な沖縄戦を題材にしながらも、陰々鬱々とただ沈み込むのではなく、ここかしこに生活者の賑やかさや逞しさが漂っているのだ。
 芥川賞受賞の要因の一つとして、優れた構成とそれによる読者を引き込む力があるように思えた。 続きを読む

参院選2022直前チェック⑥――現実的な公明党の安全保障政策

ライター
松田 明

世界最高レベルの安全が実現

 今回の参院選で有権者が重視する政策。各メディアの調査でもおしなべてトップは「物価・景気対策」、次に「社会保障」と続き、3番目にくるのが「外交・安全保障」だ。
 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、国連安保理の常任理事国が国連憲章に反して他国の領土を侵略するという前代未聞の暴挙。
 さらに、北朝鮮はミサイル実験を繰り返し、その技術と精度を着々と高めている。軍事・安全保障の専門家のあいだでは、いわゆる「台湾有事」の可能性についても楽観できない観測がある。
 有権者にとって年初まで最大の関心事だった「新型コロナ対策」より、今や「外交・安全保障」がはるかに重要な関心事になっているのも当然だろう。 続きを読む

参院選2022直前チェック⑤――多様性を認める社会を実現するために

ライター
松田 明

松野官房長官(中央右)に多様性が尊重される社会について提言を渡す竹内政調会長と谷あい正明氏

立憲民主党議員の時代錯誤な発言

 参院選公示を5日後に控えていた6月17日、その〝発言〟は山梨県議会で飛び出した。
 LGBTQ+(性的マイノリティー)など多様な人に対する理解を深め、共生する社会を目指すために設置された県議会の委員会で、立憲民主党の山田七穂議員が次のように語ったのだ。

「LGBTQについて、少数の方の主張を認めることは非常に大事だと思う」としたうえで「病気といったら悪いが、県の施策では理解をしよう、理解の促進をしようという施策が多いが、これに対して普通に戻していくという取り組みが、あまり見受けられないが元には戻らないのか」などと発言しました。(「NHK NEWS WEB」6月17日

 WHO(世界保健機関)が「同性愛」を「国際疾病分類」から削除したのは32年も前の1990年5月のこと。しかも、毎年6月は世界各国でLGBTQ+の権利を啓発するプライド月間として定着し、記念の行事などがおこなわれている。 続きを読む

参院選2022直前チェック④——若者の声を聴いているのは誰か

ライター
松田 明

野党の手法は「ファシズムの土壌」

 先ごろ『ぶっちゃけ、誰が国を動かしているのか教えてください 17歳からの民主主義とメディアの授業』(日本実業出版社)という本が出た。
 著者である東京工業大学の西田亮介准教授は、若者の投票率が低い背景を、若者にとってコストはかかるものの短期的なベネフィットが感じられないことだと指摘している(『第三文明』8月号)。
 政治に関心を持ち、各党各候補の政策や能力を吟味し、時間を割いて投票所に足を運ぶという「コスト」に対し、自分の1票が社会を変える実感という「ベネフィット」が見えづらいのだ。

投票に行かない若い人々への政党のアプローチについては、与党がコストをかけ続けているのに対し、野党はこれといった施策が見えてきません。利益団体政治を悪魔化して「市民のために」といった抽象的な言葉で有権者に呼び掛ける手法は、昔からファシズムの土壌だと言われており、私も危ういと思います。(『第三文明』8月号

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