旧統一教会問題を考える(上)――ミスリードしてはならない

ライター
松田 明

「政治と宗教」の問題ではない

 政治家と世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)の関係をめぐる報道が連日、人々の耳目を集めている。
 旧統一教会は宗教法人ではあるが、全国霊感商法対策弁護士連絡会が把握している被害額だけで1237億円(1987年~2021年)を超えるようなきわめて反社会性の強い実態が明らかになっている。そうした団体が社会的信用を偽装するために、さまざまな手口で政治家に接近してきた。
 憲法学が専門の南野森(みなみの・しげる)九州大学教授は、

 旧統一教会の問題は政治と宗教の問題というよりは、政治と不法行為を繰り返す団体の問題であると理解すべきだ。「信教の自由」や「政教分離」といった憲法上の一般的な問題と捉えるべきではない。(『毎日新聞』8月9日

と指摘している。 続きを読む

玉城デニー県政の災禍――沖縄各界から糾弾の声

ライター
松田 明

「政府は尽力してくれた」

 8月15日、沖縄県企画部統計課が「令和元年度県民経済計算の概要」を発表した。これによると1人あたりの県民所得は241万円で〝過去最高〟となった。
 ただし、これは手放しで喜べる数字ではまったくない。
 まず、全国平均(318万円)の4分の3で、あいかわらず47都道府県の最下位であること。
 もうひとつは、あくまで令和元年度(2019年4月~2020年3月)の数字であって、最終盤以外はコロナ禍の影響を受けていない時期の数字であることだ。統計課は、20年4月以降の数字については「下がるだろう」と見ている。 続きを読む

日本共産党 暗黒の百年史――話題の書籍を読む

ライター
松田 明

「党史研究の最高傑作」

 さる7月15日、日本共産党は「党創立100周年」を迎えたと機関紙などで発表した。
 同じタイミングで1冊の本が刊行された。書名は『日本共産党 暗黒の百年史』(飛鳥新社)。著者は1985年に日本共産党に入党し、日本共産党本部に勤務。2015年には党歴30年の「永年党員」として登録された、元日本共産党・板橋区議の松崎いたる氏だ。

元党員が命がけで内部告発、
党史研究の最高傑作。
ソ連、中国、自衛隊、天皇、革命――
この政党がやってきたこと、
やろうとしていることがすべてわかる!(帯文より)

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連載エッセー「本の楽園」 第135回 マーサ・ナカムラの世界「詩」

作家
村上政彦

 僕がマーサ・ナカムラの詩を読んだのは、読み手として信頼している荒川洋治さんが褒めていたからだ。もうずいぶん前、ある文芸誌に短篇の連作をしていたころ、荒川さんが地方紙の文芸時評(だったとおもう)で取り上げて、褒めてくれた。
 それ以来、僕は荒川さんに勝手に好印象を持ち、読み手として信頼を置くようになった。そう。僕は単純な男である。その人が、マーサ・ナカムラの『狸の匣』(たぬきのはこ)という詩集を褒めていた。これは読まねばならない。
 僕はさっそく取り寄せて読んでみた。おもしろい。マーサ・ナカムラは、どうやら若い女性らしい。若い詩人の詩集を読んで、おもしろい、とおもうことは、あまりない。最近だと山田亮太の『オバマ・グーグル』がおもしろかった。 続きを読む

芥川賞を読む 第20回『ゲルマニウムの夜』花村萬月

文筆家
水上修一

暴力と性の圧倒的熱量に引きずり込まれる

花村萬月(はなむら・まんげつ)著/第119回芥川賞受賞作(1998年上半期)

凄まじい熱量で読者を引き込む

 第119回芥川賞は、ダブル受賞となった。そのひとつが、今や売れっ子作家の花村萬月の「ゲルマニウムの夜」だ。当時43歳。芥川賞受賞以前から既にその評価は高く、平成元年には「ゴッド・ブレイス物語」で小説すばる新人賞を、平成9年には「皆月」で吉川英治文学新人賞を受賞している。芥川賞受賞は満を持しての受賞ということになる。 続きを読む