フランスのセクト対策とは(上)――創価学会をめぐる「報告書」

ライター
松田 明

「非カトリック的」なものへの侮蔑

 安倍元首相の銃撃事件に端を発し、世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)をめぐる批判が再燃した。
 これに関して、フランスの「反セクト法」のような、いわゆる「カルト」を規制する法律を日本でも導入すべきだという声が、立憲民主党などからあがってる。だが、法学者のなかには慎重論が強い。
 一部メディアやネット上では、フランスのセクト対策に関して、あいかわらず正確さを欠いた言説が溢れている。人々の漠然とした不安に便乗して党派性に立ったヒステリックな声が飛び交い、デマがデマを増幅させるという状況は、決して望ましいものではない。
 そこで、フランスにおけるセクト対策の経緯と実態を、あらためて検証しておきたいと思う。 続きを読む

芥川賞を読む 第21回『ブエノスアイレス午前零時』藤沢周

文筆家
水上修一

目の見えない老婆の踊るダンスに浮かびあがる輝きと寂寥感

藤沢周(ふじさわ・しゅう)著/第119回芥川賞受賞作(1998年上半期)

 W受賞となった第119回芥川賞受賞作の一つは、藤沢周の「ブエノスアイレス午前零時」だった。それまでの藤沢周は、「ゲルマニウムの夜」の作者・花村萬月と共通する荒々しい力が持ち味だと思っていたが、本作品は、以前芥川賞候補となった3作品とは異なる静謐な空気を漂わせている。
 
――主人公のカザマは、東京を離れて雪深い故郷に戻り、冴えない温泉宿の従業員として働いていた。朝、源泉で温泉卵を作ることから始まる退屈な日々に埋没する生活を送っていた――。 続きを読む

書評『もうすぐ死に逝く私から いまを生きる君たちへ』――夜回り先生 いのちの講演

ライター
本房 歩

夜の世界の闇に沈んでいく子どもたち

 夜の街を見回っては、徘徊し薬物や売春に走ろうとしている少年少女たちに声をかける。著者が、それまで横浜でも名門校といわれていた高校の教諭から、全国最大規模の定時制高校の教諭へと移ったのは30年前のことだ。
 今日の定時制高校は、いじめなどさまざまな理由で昼間の高校に行かない選択をした子どもが約半数。ほかに家計を支えるために働きながら学ぶ人や、都市部だと外国から来て日本語が不自由だけれども向学心のある子どもたちなどが占め、むしろ多様な学びを支える場になっている。
 だが、著者が赴任した当時の、その横浜の定時制高校は、口の悪い市民が「横浜市立暴力団養成所」とまで呼ぶほど荒れた場所だった。

入学した子どもたちの半数近くが学校を辞めていき、夜の世界に沈んでいく。そんな学校でした。(本書『もうすぐ死に逝く私から いまを生きる君たちへ』

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連載エッセー「本の楽園」 第137回 ひとりで死んだ、ぼく

作家
村上政彦

 20歳になったとき、僕は遺書を書いていた。死のうとおもっていたのだ。興奮して一睡もせずに何やら次々と文字を書き連ねて、気がついたら朝になっていた。書き終わって読み返したら、憑き物が落ちたようにきょろりとして、なぜ、あんなに興奮していたのか、死のうとまで思いつめたのか、自分でもよく分からなかった。結局、僕は死ななかった。
 おかげで、ずっとあとになるが、いまの妻と巡り会って大恋愛をし、文学新人賞をもらって作家デビューを果たした。あのとき、死ななくてよかった、と心からおもう。若気の至りで命を絶っていたら、いまの幸せ(そう、僕は幸せである)はなかった。
 今回取り上げる絵本『ぼく』は、僕の好きな詩人・谷川俊太郎さんの文章に、谷川さんの指名した若いイラストレーター・合田里美さんが絵を描いた。テーマは重い。子供の自死だ。小学生の男の子がみずから命を絶つというストーリーである。 続きを読む

「立党精神」から60年――公明党の新たな出発を願う

ライター
松田 明

55年体制の傲慢と腐敗を破る

 創価学会は戸田城聖・第2代会長時代の1954年に会内に文化部を設置し、そこから候補者を擁立して、翌55年4月の統一地方選挙を皮切りに独自の議員を輩出してきた。
「55年体制」という言葉があるとおり、この1955年は自由民主党と日本社会党が結成された年。大企業の利益を優先する自民党と、官庁・大企業の労組の利益を代弁する社会党。日本の政治は東西冷戦の対立構造をそのまま反映したものになっていたのだ。
 国会は不毛なイデオロギー対立に明け暮れ、料亭で与野党幹部が賭け麻雀や宴会に興じて賄賂が飛び交う〝夜の国対政治〟が常態化。国民の大多数を占める庶民は置き去りにされていた。そこに庶民が立ち上がった。
 1960年に池田大作・第3代会長が就任。池田会長は「宗教活動をする宗教団体」と「政治活動をする政治団体」の分離の必要性を挙げて創価学会文化部を解消し、61年11月に公明政治連盟を結成した。公明政治連盟は、あくまでも全国民に奉仕する立場であるからだ。 続きを読む