参院選2022直前チェック⑥――現実的な公明党の安全保障政策

ライター
松田 明

世界最高レベルの安全が実現

 今回の参院選で有権者が重視する政策。各メディアの調査でもおしなべてトップは「物価・景気対策」、次に「社会保障」と続き、3番目にくるのが「外交・安全保障」だ。
 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、国連安保理の常任理事国が国連憲章に反して他国の領土を侵略するという前代未聞の暴挙。
 さらに、北朝鮮はミサイル実験を繰り返し、その技術と精度を着々と高めている。軍事・安全保障の専門家のあいだでは、いわゆる「台湾有事」の可能性についても楽観できない観測がある。
 有権者にとって年初まで最大の関心事だった「新型コロナ対策」より、今や「外交・安全保障」がはるかに重要な関心事になっているのも当然だろう。 続きを読む

参院選2022直前チェック⑤――多様性を認める社会を実現するために

ライター
松田 明

松野官房長官(中央右)に多様性が尊重される社会について提言を渡す竹内政調会長と谷あい正明氏

立憲民主党議員の時代錯誤な発言

 参院選公示を5日後に控えていた6月17日、その〝発言〟は山梨県議会で飛び出した。
 LGBTQ+(性的マイノリティー)など多様な人に対する理解を深め、共生する社会を目指すために設置された県議会の委員会で、立憲民主党の山田七穂議員が次のように語ったのだ。

「LGBTQについて、少数の方の主張を認めることは非常に大事だと思う」としたうえで「病気といったら悪いが、県の施策では理解をしよう、理解の促進をしようという施策が多いが、これに対して普通に戻していくという取り組みが、あまり見受けられないが元には戻らないのか」などと発言しました。(「NHK NEWS WEB」6月17日

 WHO(世界保健機関)が「同性愛」を「国際疾病分類」から削除したのは32年も前の1990年5月のこと。しかも、毎年6月は世界各国でLGBTQ+の権利を啓発するプライド月間として定着し、記念の行事などがおこなわれている。 続きを読む

参院選2022直前チェック④——若者の声を聴いているのは誰か

ライター
松田 明

野党の手法は「ファシズムの土壌」

 先ごろ『ぶっちゃけ、誰が国を動かしているのか教えてください 17歳からの民主主義とメディアの授業』(日本実業出版社)という本が出た。
 著者である東京工業大学の西田亮介准教授は、若者の投票率が低い背景を、若者にとってコストはかかるものの短期的なベネフィットが感じられないことだと指摘している(『第三文明』8月号)。
 政治に関心を持ち、各党各候補の政策や能力を吟味し、時間を割いて投票所に足を運ぶという「コスト」に対し、自分の1票が社会を変える実感という「ベネフィット」が見えづらいのだ。

投票に行かない若い人々への政党のアプローチについては、与党がコストをかけ続けているのに対し、野党はこれといった施策が見えてきません。利益団体政治を悪魔化して「市民のために」といった抽象的な言葉で有権者に呼び掛ける手法は、昔からファシズムの土壌だと言われており、私も危ういと思います。(『第三文明』8月号

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参院選2022直前チェック③――コロナ対策、与野党の明暗

ライター
松田 明

厚労省にワクチンの予算確保を促す「あきの公造」参議院議員(2020年7月参議院予算委員会)

日本の対策は他国の模範になる

 中国の武漢で広がっていた新型肺炎について、WHO(世界保健機関)が「新型ウイルスの可能性」をはじめて指摘したのが2020年1月初旬。同21日に、WHOは「ヒトからヒトへの感染が見られる」と発表した。
 この発表から参院選投票日前日の7月9日で900日となる。
 未知のウイルスに世界全体が覆われる人類史上かつてないパンデミック。各国政府は暗中模索のなかで、さまざまな対策を講じた。
 同じ東アジアでも中国は「ZEROコロナ」を掲げ、強権的なロックダウンを繰り返して早い時期に成果をあげたように見えた。
 韓国はPCR検査を徹底し、台湾はITをフル活用して、いずれも一定の成果が見られた。同じ太平洋の島国であるニュージーランドも「ZEROコロナ」政策を打ち出し、やはり高い成果をあげていた。
 これに対し、日本は憲法との兼ね合いから移動を禁止するような「ロックダウン」は採用せず、「WITHコロナ」で慎重に社会経済を回しながらワクチン接種の徹底で乗り切ってきた。 続きを読む

空手普及100年――唐手から空手へ(中)

ジャーナリスト
柳原滋雄

確定できないままの講道館演武会

 1957年に88歳で死去した沖縄出身の船越義珍(ふなこし・ぎちん 1968-1957)が、東京で空手指導したのは戦争中に大分県に疎開したおよそ2年間を除く33年の歳月である。
 逝去半年前の1956年秋、船越は産業経済新聞社から『空手道一路』という自身のエッセイ的自伝を上梓した。空手にかけた自身の生涯を綴ったものだったが、記憶のみに基づいて書いた部分が多く含まれることは指摘されてきた通りだ。
 例えば文部省主催の運動体育展覧会のため上京した肝心の1922(大正11)年のくだりも、「たしか、大正10年の末だったと思う」などと書く。信頼できる資料と照らし合わせないまま活字にしたことが明らかだ。こうした傾向はこの著作に限ったわけではない。 続きを読む