裾野市の保育園問題から考える政治の責任

ライター
米山哲郎

《1》裾野市の保育園で起きた事件

 静岡県東部の富士山のふもとに位置し、四季ごとに山の変化を楽しめる裾野市。昨今はトヨタ自動車が自動運転を可能にする近未来型都市の造成を進めている注目の街だ。
 その裾野市で、「まさかこんなことが‥‥‥」と思わず絶句してしまう衝撃的な事件が起きていた。それは市内の保育園でのこと。1歳児のクラスを受け持つ保育士3人が複数の園児に16もの不適切な虐待行為をしていたという事件で、昨年12月4日に当時保育士だった3人が逮捕された。
 明らかになっている園児への不適切な虐待行為とは、暴言を吐く、カッターナイフを見せ脅す、脚をつかんで宙刷りにする、頭をバインダーでたたいて泣かすなどで、およそ口に出すのも憚られるものばかりだ。6月以降、逮捕された3人の虐待行為が目撃されるなどし、職員間で話題になっていたという。
 子どもの安全が保障されなければならない場所である保育園で、これらの信じられない行為が行われていた。大変にショックな事件であり、小さな子どもの心への影響も心配だ。すでに、県や市においては当該保育園に対して特別指導監査を行っており、厳正に対処してもらいたい。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第144回 中国の現代文学

作家
村上政彦

 閻連科(えんれんか)――中国の現代文学に関心のある人なら、一度は耳目に触れた名ではないかとおもう。僕は、この小説家の書く作品が好きで、何冊かは読んでいる。そして感心した。
 僕はそれほど詳しいわけではないが、中国には、何人かすごい小説家がいる。90年代には、ラテンアメリカ文学のブームがあったけれど、もし、日中韓などを核にして、東アジア文学のようなムーブメントが起きたとしたら、ラテンアメリカ文学のガルシア・マルケスに匹敵するのが、閻連科ではないか。
 彼の小説は、だいたいスキャンダラスだ。母国では禁書扱いにされている作品もある。でも、そういう小説家の書くものは、体制とスリリングな関係にあるからこそ、おもしろい。読む価値もある。
 ところが、本作『年月日』は、閻連科自身が、この作品は自分が書くほかの小説とは違っている、閻連科はこのような小説も書くのだと知ってほしいといっている。もちろん、力強い文章の運びや物事の本質を射抜く眼の働き方は、やはり、閻連科の小説だ。 続きを読む

2023年度予算案と公明党――主張が随所に反映される

ライター
松田 明

政府与党政策懇談会後に会見する公明党山口代表(12月23日)

物価高騰対策への施策

 2023年度当初予算案と税制改革大綱が12月23日の閣議で決定した。一般会計総額は過去最大の114兆3812億円。政府は当初予算案と税制関連法案を1月召集の通常国会に提出し年度内成立をめざす。
 このうち当初予算案は、日本が直面する内外の重要課題として、①安全保障・外交、②地方デジタル田園都市国家構想、③子ども政策、④GX(グリーントランスフォーメーション)を柱としたものになっている。
 グリーントランスフォーメーション(Green Transformation)とは、産業・社会構造を化石燃料からクリーンエネルギーを主軸とするものへと転換する取り組み。政府は2050年までに温室効果ガスの排出ゼロをめざすカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を掲げている。
 また23年度税収見通しが過去最高となる見通しから、新規国債の発行は22年度当初予算から1兆3000億円減額することとなった。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第143回 令和の家族小説

作家
村上政彦

 僕が小説を書き始めたころ、アイドルは中上健次だった。一度、人を介して会いたいといわれたことがあったのだが、酒場への呼び出し出しだったので、生意気にも断ってしまった。中上健次は特別な存在だったから、そういう会い方をしたくなかったのだ。
 できれば、文芸誌の対談とか、ちゃんとした会い方をしたかった。その後、しばらくして中上は大病を患って亡くなった。僕はそれまでに彼と対談をするほどの出世はできなかった。あー、どうしてあのとき、会っておかなかったのだろう、といまでも溜め息が出る。
 小説家・中上健次の名が大きく世に出たのは、『岬』という小説が芥川賞をとったからだった。この作品は、一種の家族小説と読める。主人公の秋幸は土方である。土をめくり、汗を流し、飯を食う――そんな単純な生き方を心地よいとおもっている。
 ところが、秋幸の家族関係は複雑だ。彼が、「あの男」と呼ぶ実父には、ほかにも2人の情婦がいて、子供も産んだ。彼の母は、そんな夫と別れ、誠実な男と再婚した。男には連れ子が一人いた。
 つまり、何人かの腹違いのきょうだいと血の繋がりのないきょうだいがいる。秋幸はそういうしがらみをうっとうしいと感じている。特に血縁はわずらわしく、人を縛る。こういう血のしがらみを描いた家族小説は、昭和だとおもう。 続きを読む

安保関連3文書が決定(下)――脅威抑止としての「反撃能力」

ライター
松田 明

岸田総理大臣の会見(12月16日)

平和安全法制も「賛成」世論が上回る

 今回、政府が決定した安保関連3文書では、「反撃能力」の保有が明記された。これまで「敵基地攻撃能力」と呼ばれていたものだ。
 日本経済新聞、読売新聞、産経新聞や、日本維新の会、国民民主党などは、この「反撃能力」が盛り込まれたことを時宜にかなったものとして評価している。一方、立憲民主党は党内の意見がまとまらず、日本共産党や一部メディアなどからは「専守防衛を逸脱する」等の批判が出ている。
 この「反撃能力」について検証したい。
 まず国家が武力を行使することについて国連憲章は、

すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。(「国連憲章」第2条の4

と禁じており、国際法上も一般的に認められていない。ただし例外として自衛のための行使は「安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間」という条件付きで、個別的と集団的の双方で認められている(「国連憲章」第51条)。 続きを読む