池田SGI会長が緊急提言――NPT運用検討会議に寄せて

ライター
松田 明

マスコミ各社が一斉に報道

 池田大作SGI(創価学会インタナショナル)会長は、8月1日からニューヨークの国連本部で開幕する「NPT(核兵器不拡散条約)運用検討会議」に寄せた「緊急提言」を発表した。
 7月25日にNHKやすべての全国紙電子版が一斉に報じ、26日付の聖教新聞に提言の全文が掲載された。
 NPT(Nuclear Non-Proliferation Treaty/核兵器不拡散条約)は、核兵器廃絶への交渉が進展せず、むしろ核兵器開発や保有への動きを見せる国が増えていた1968年に成立。1970年に発効した。
 NPTでは「1967年1月1日より前に核兵器を保有し、爆発させた国」を「核兵器国」(米国、ロシア、英国、フランス、中国)として核兵器の保有を認める一方、それ以外の国である「非核兵器国」には核兵器の取得を禁止し、非核兵器国の原子力活動に対してIAEA(国際原子力機関)による保障措置(査察や検証)の実施を義務づけている。(参照:国際平和拠点ひろしまウエブサイト続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第134回 パムクの文学講義

作家
村上政彦

 ハーバード大学には、「ノートン・レクチャーズ」と呼ばれる詩の連続講義がある。これはひとりの講師を教授として招いて、毎年開かれている。講師の顔ぶれがすごい。T・S・エリオット、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、ウンベルト・エーコなどの世界的な詩人、小説家ばかりか、ベン・シャーン、イーゴリ・ストラヴィンスキー、レナード・バーンスタイン、ジョン・ケージなど、名だたる画家や音楽が教壇に立ってきた。
 トルコの小説家オルハン・パムクも、そこに名を連ねた。彼がノーベル文学賞を受けたのが2006年。「ノートン・レクチャーズ」に招かれたのは、その3年後だった。ハーバード大学の学生が羨ましい。ボルヘスやエーコの講義は、僕も聴きたかった。もちろん、パムクの講義も。
 ま、本という便利なものがあるお陰で、ハーバード大学の学生でなくとも、内容を知ることはできる。こっそり、パムクが講義をしている様子を見てみよう。 続きを読む

空手普及100年――唐手から空手へ(下)

ジャーナリスト
柳原滋雄

「唐手」から「空手」の時代へ

 船越が東京で最初の稽古場として使用した明正塾(沖縄県人学生寮)から改築問題で立ち退きを求められ使用できなくなるのは昭和初期。やむなく他流派の道場の空いている時間を借りて稽古を続けた。
 1924年、慶應義塾大学に唐手道研究会が創設され、その流れは徐々に他大学にも広がっていった。当然私学のライバルであった早稲田大学にも空手研究会が発足。慶応に遅れること7年過ぎていた。東京帝国大学、一橋大学など多くの大学にも空手部がつくられていった。 続きを読む

2連敗した立民と共産――参院選でも厳しい審判

ライター
松田 明

衆院選に続く2党の大敗

 7月10日に投開票がおこなわれた第26回参議院選挙は、与党の圧勝で終わった。
 自民党は単独で改選議席125の過半数となる63議席を獲得。公明党も選挙区7候補が激戦を制して全員当選を果たし、13議席を獲得した。
 一方の野党は、立憲民主党が改選23議席から大きく後退して17議席にとどまり、日本共産党も6議席から4議席へと大敗した。
 立憲民主党は獲得議席数では辛うじて野党第一党の座を保ったものの、比例区の得票数では日本維新の会に及ばなかった。日本維新の会は改選議席の6から12議席へ倍増させている。
 さらに立憲民主党は、参議院幹事長だった現職の森裕子氏が自民党の新人に敗北。小沢一郎氏のおひざ元である岩手選挙区でも、現職の木戸口英司氏が自民党の新人に敗北し、1992年以来30年ぶりに自民党が勝利した。
 また比例区でも、有田芳生氏や白眞勲氏といった現職が議席を失った。 続きを読む

芥川賞を読む 第19回『水滴』目取真俊

文筆家
水上修一

奇想天外な物語から、沖縄戦の過去と現在が浮かび上がる

目取真俊(めどるま・しゅん)著/第117回芥川賞受賞作(1997年上半期)

奇妙で強烈な印象をもたらすシーン

 第117回芥川賞を受賞したのは、目取真俊の「水滴」だった。『文学界』に掲載された原稿用紙約60枚の短編小説である。
 目取真の出身は沖縄で、作品の舞台も沖縄。114回の受賞作「豚の報い」も沖縄が舞台だったことから、選考委員の中からは「またしても沖縄か」という声もあったようだが、やはり風土的にも歴史的にも文学の題材が豊富なのだろう。
「豚の報い」もそうだが、魅力の一つは沖縄の人たちの振る舞いからにじみ出てくるおおらかさや笑いである。特に「水滴」は、悲惨な沖縄戦を題材にしながらも、陰々鬱々とただ沈み込むのではなく、ここかしこに生活者の賑やかさや逞しさが漂っているのだ。
 芥川賞受賞の要因の一つとして、優れた構成とそれによる読者を引き込む力があるように思えた。 続きを読む