立民、沈む〝泥船〟の行方――「立憲共産党」路線が復活か

ライター
松田 明

「どう考えても理解しがたい」

 立憲民主党から離党者が出始めた。
 1人目は松原仁・衆議院議員。6月9日に離党届を出した。松原氏の言い分は10増10減にともなう新設の「東京26区」からの立候補を認めてもらえなかったというもの。
 松原氏は松下政経塾を経て1985年に新自由クラブから都議選に出馬して落選。以後、無所属→自民党→新生党→新進党→民主党→民進党→希望の党→無所属→立憲民主党と目まぐるしく立ち位置を変え、今度はまた無所属となった。
 立憲民主党東京都連は、

党所属ベテラン代議士がこのような政治行動に至ったことは残念だ。これまで活動してきた地元選挙区を離れて新設の東京26区を希望する合理的な理由はどう考えても理解しがたい。

と、松原氏を非難した。 続きを読む

「革命政党」共産党の憂うつ――止まらぬ退潮と内部からの批判

ライター
松田 明

「赤旗」の発行自体が危機的事態

 6月26日の『しんぶん赤旗』が、ちょっとした波紋を呼んだ。1面の全幅を使って掲げられたヨコ見出しにデカデカと、

革命政党として統一と団結固める

との文字が躍っていたからだ。
 これは24日から2日間にわたって開催された日本共産党の「第8回中央委員会総会」(8中総)を報じた紙面だ。赤旗の1面に「革命政党」という文字が躍ったのは、いつ以来のことだろう。党員や支持者のなかからは、むしろ戸惑いや反発の声も聞こえる。
 8中総では、退潮傾向に歯止めがかからない党勢への言及が相次いだ。
 先の統一地方選で、日本共産党は計135議席を減らす大惨敗を喫した。党員の減少と高齢化、機関紙『しんぶん赤旗』の部数減も著しい。
 志位和夫委員長自身が、

討論では、党内に、「もう一つ元気が出ないという声がある」、「敗北主義的な傾向がある」ということが率直に出されました。(8中総「結語」

この2回の国政選挙と統一地方選挙での後退、連続する激しい反共攻撃などに直面して「何となく元気が出ない」という気分が党内にあることは事実だと思います。(同)

と述べている。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第163回 百冊で耕す

作家
村上政彦

 僕は小説家としてプロデビューしてから35年になるけれど、いまだに文章の書き方や読書の仕方についての本を読む。ひとつは、同業他社がどのような働き方をしているか知りたい好奇心、もうひとつは、まだ僕自身が気づいていないやり方があれば学びたいという向学心。
 結果として、たいてい文章の書き方の本は、あまり発見がない。ああ、同じことをやっているな、と市場調査で予想通りのデータが示されたという思いになる。読書の仕方についても、似たようなものだ。
 ところが、ここで取り上げる『百冊で耕す』は、ちょっとおもしろかった。僕は好きな作家の吉田健一が、300冊の蔵書しか持たなかったと知って、これは僕も実践しなければと思った。
 吉田健一の300冊であれば、とても貴重な本ばかりだろう。蔵書リストが見たいぐらいだが、それは叶いそうもない。そこで、吉田健一になったつもりで、少なくとも4~5000冊はある蔵書(それも日々、増え続けている)を必要な本だけに絞ろうと考えた。 続きを読む

公明党「住民票移動」というデマ――名誉毀損は〝犯罪〟である

ライター
松田 明

損害賠償と謝罪広告を求める

 6月20日、創価学会本部は、株式会社扶桑社と『週刊SPA!』編集人らを相手取り、損害賠償と謝罪広告の掲載を求めて民事訴訟を提起した(「創価学会公式サイト」6月21日)。
 また公明党も同日、党の名誉を著しく毀損する事実無根の記述があったとして、同社と倉山満氏、同誌の編集人、発行人に対し、損害賠償の支払いと同誌への謝罪広告の掲載を求める訴訟を東京地裁に起こした。
 問題となったのは『週刊SPA!』6月13日号(6日発売)に掲載された「倉山満の知性のリング 言論ストロングスタイル」。
 このなかで、〝学会が会員に指示をして組織的に住民票を不正に移動させ、投票をさせている。学会には「3カ月ルール」なるものがあり、住民票を移動した後、選挙権が生じるまでの3カ月間は連続して選挙をされては困る。そのため時の総理大臣が解散権を行使したければ、前の選挙から3カ月空けなければならない〟との報道がなされていた。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第162回 小説は人物が九割

作家
村上政彦

 近年は、きちんと小説の読めるプロが少なくなった。大手出版社の編集者だからといって、読めるとは限らない。ここでいう「読める」は、もちろん文字が読めることではなく、小説をしっかり評価できるということだ。
 でも、まったく、読める人がいないわけではない。僕の周りには何人か信頼のできる読み手がいる。ときには、そういう人たちに生原稿を読んでもらって、意見を聴くこともある。僕の知っているプロの作家は、たいていそうやって作品の水準を上げてゆく。
 信頼できる読み手のひとりが、批評家のKさんだ。この人とは知り合いの編集者を介して、30年ほど前に出会った。それから、僕の小説の良き読み手であり、知恵袋ともなってくれている。
 そのKさんが、一昨年の収穫ベスト3のうち、1位に挙げていたのが、『優しい猫』である(ちなみに鳥影社から出た僕の『αとω』は3位)。これは読まないといけないと思いつつ、あっという間に2年が経ってしまった。 続きを読む