日本共産党 暗黒の百年史――話題の書籍を読む

ライター
松田 明

「党史研究の最高傑作」

 さる7月15日、日本共産党は「党創立100周年」を迎えたと機関紙などで発表した。
 同じタイミングで1冊の本が刊行された。書名は『日本共産党 暗黒の百年史』(飛鳥新社)。著者は1985年に日本共産党に入党し、日本共産党本部に勤務。2015年には党歴30年の「永年党員」として登録された、元日本共産党・板橋区議の松崎いたる氏だ。

元党員が命がけで内部告発、
党史研究の最高傑作。
ソ連、中国、自衛隊、天皇、革命――
この政党がやってきたこと、
やろうとしていることがすべてわかる!(帯文より)

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連載エッセー「本の楽園」 第135回 マーサ・ナカムラの世界「詩」

作家
村上政彦

 僕がマーサ・ナカムラの詩を読んだのは、読み手として信頼している荒川洋治さんが褒めていたからだ。もうずいぶん前、ある文芸誌に短篇の連作をしていたころ、荒川さんが地方紙の文芸時評(だったとおもう)で取り上げて、褒めてくれた。
 それ以来、僕は荒川さんに勝手に好印象を持ち、読み手として信頼を置くようになった。そう。僕は単純な男である。その人が、マーサ・ナカムラの『狸の匣』(たぬきのはこ)という詩集を褒めていた。これは読まねばならない。
 僕はさっそく取り寄せて読んでみた。おもしろい。マーサ・ナカムラは、どうやら若い女性らしい。若い詩人の詩集を読んで、おもしろい、とおもうことは、あまりない。最近だと山田亮太の『オバマ・グーグル』がおもしろかった。 続きを読む

芥川賞を読む 第20回『ゲルマニウムの夜』花村萬月

文筆家
水上修一

暴力と性の圧倒的熱量に引きずり込まれる

花村萬月(はなむら・まんげつ)著/第119回芥川賞受賞作(1998年上半期)

凄まじい熱量で読者を引き込む

 第119回芥川賞は、ダブル受賞となった。そのひとつが、今や売れっ子作家の花村萬月の「ゲルマニウムの夜」だ。当時43歳。芥川賞受賞以前から既にその評価は高く、平成元年には「ゴッド・ブレイス物語」で小説すばる新人賞を、平成9年には「皆月」で吉川英治文学新人賞を受賞している。芥川賞受賞は満を持しての受賞ということになる。 続きを読む

書評『プーチンの野望』――内在論理から戦争を読む

ライター
本房 歩

ワシントンが驚いた情報収集力

 2月24日にロシアによるウクライナ侵攻が起きてから、書店にはロシアやウクライナ関連の書籍コーナーが目立つ。ロシアやウクライナの基本的情報を綴ったものから、経済、軍事・安全保障、文学、地政学など、さまざまな視点に特化したものがベストセラーにランクインしている。
 つまり、それは今回起きている軍事侵攻に人々が大きな不安を覚えている表れであり、同時にこれまで私たちがロシアやウクライナことをほとんど知らなかったことを意味している。
 さて、そうした関連書籍のなかで、とくに注目されている一冊が佐藤優氏の『プーチンの野望』(潮新書)だ。6月6日に発売されるや、たちまち版を重ね、1カ月あまりで7万部を突破した。

 本書は、私が職業作家になった05年以降、さまざまな媒体に発表したプーチン論を再編集し、加除修正を加えたものだ。この機会に昔の原稿を読み直してみたが、基本線について変更することはなかった。(本書「はじめに」)

 さらに2月のウクライナ侵攻後、著者自身の思うところを語り下ろして新章としている。 続きを読む

「政治と宗教」危うい言説――立憲主義とは何か

ライター
松田 明

目につく「政教分離」への誤解

 世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)と政治家との関係に注目が集まったことで、あらためて政治と宗教についての議論が起きている。
 一般論として、政治家が(相手が宗教団体であろうとなかろうと)反社会的な問題が指摘されている団体からの支援を望んだり、それらの行事に参加したりすることは慎重であるべきだし、市民感情としては容認できない。たとえ形式的な挨拶や祝電であったとしても、当該団体の正当化や権威付けに利用されかねないからだ。
 一方、政治と宗教をめぐって飛び交う言説のなかには、憲法や民主主義に対する基本的な理解を欠いた、かなり危ういものがいくつか見受けられる。
 まず「政教分離」に対する初歩的な誤解だ。 続きを読む