日中国交正常化50周年の節目に求められる政治の役割――公明党は憲法98条を守り日中友好関係促進の具体的な行動を

中部大学教授
酒井吉廣

 ペロシ米下院議長訪台の翌日(8月4日)、中国は日本がEEZ(排他的経済水域)と主張する海域にロケット砲を五発着弾させた。このタイミングでのミサイルの発射は、日本がペロシを歓迎することを批判する意思表示を目的とするものだろう。
 ウクライナ紛争開始から半年を経た中で、台湾海峡問題もクローズアップされてきた状況でのこの出来事は、日本にとって大きな事件と認識された。ただし、訪台に対する中国の反発のイメージが強すぎて、日本訪問を批判することへの意思表示という認識は日本ではされていなかったようである。
 本件については、今後の日中関係を考えるべく、楊潔篪中国共産党政治局員が8月18日、秋葉剛男日本国家安全保障局長を天津に呼んで、食事を交えて7時間という長時間の会議の中で話し合われた。
 米中関係の改善を模索し始めた中国にとって、東アジアにおける米国の軍事戦略に取り込まれる割合の大きくなった日本との関係は、長い歴史のある隣国として、避けては通れない領土問題の解決とともに重要な外交課題となっている。 続きを読む

旧統一教会問題を考える(下)――党利党略に利用する人々

ライター
松田 明

共産党の異様なシンポジウム

 安倍元首相が銃撃殺害された事件で、容疑者の犯行動機が世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)への恨みだったと報道されると、7月21日に立憲民主党は「旧統一教会被害対策本部」(本部長:西村智奈美衆院議員)を立ち上げた。
 また日本共産党も同じ日に「統一協会問題追及チーム」(責任者・小池晃書記局長/共産党は「統一教会」を「統一協会」と表記する)を立ち上げている。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第136回 マーサ・ナカムラの世界「小説」

作家
村上政彦

 文芸誌は儲からない。ある大手誌の編集長が月に800万円の赤字が出る、年間で1億円だ、とこぼしていたそうだ。それでも、大手出版社が文芸誌を出し続けるのは、自分たちが出版人であることのアイデンティティーを保ちたいからだろうとおもう。
 僕ら小説家も儲からない。それでも小説を書くのは、書かなければ小説家でなくなるからだ。僕は小説に救われた。小説に生かされている。小説家のほかに仕事を考えつかない。だから、小説を書く。出版社も似たような事情だろう。
 というわけで、書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)という出版社から、この時勢に新しい文芸誌が生まれた。
『ことばと』。編集長は、批評家で、最近、小説を書き始めた佐々木敦だ。書肆侃侃房、新しい文芸誌、佐々木敦という組み合わせから、これは買いでしょう、とおもっていたら、なんとマーサ・ナカムラの短篇小説が掲載されていた。 続きを読む

旧統一教会問題を考える(上)――ミスリードしてはならない

ライター
松田 明

「政治と宗教」の問題ではない

 政治家と世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)の関係をめぐる報道が連日、人々の耳目を集めている。
 旧統一教会は宗教法人ではあるが、全国霊感商法対策弁護士連絡会が把握している被害額だけで1237億円(1987年~2021年)を超えるようなきわめて反社会性の強い実態が明らかになっている。そうした団体が社会的信用を偽装するために、さまざまな手口で政治家に接近してきた。
 憲法学が専門の南野森(みなみの・しげる)九州大学教授は、

 旧統一教会の問題は政治と宗教の問題というよりは、政治と不法行為を繰り返す団体の問題であると理解すべきだ。「信教の自由」や「政教分離」といった憲法上の一般的な問題と捉えるべきではない。(『毎日新聞』8月9日

と指摘している。 続きを読む

玉城デニー県政の災禍――沖縄各界から糾弾の声

ライター
松田 明

「政府は尽力してくれた」

 8月15日、沖縄県企画部統計課が「令和元年度県民経済計算の概要」を発表した。これによると1人あたりの県民所得は241万円で〝過去最高〟となった。
 ただし、これは手放しで喜べる数字ではまったくない。
 まず、全国平均(318万円)の4分の3で、あいかわらず47都道府県の最下位であること。
 もうひとつは、あくまで令和元年度(2019年4月~2020年3月)の数字であって、最終盤以外はコロナ禍の影響を受けていない時期の数字であることだ。統計課は、20年4月以降の数字については「下がるだろう」と見ている。 続きを読む