近づく統一地方選挙――日本の未来を決する戦いが始まる

ライター
米山哲郎

〝目を凝らして〟政治家選択を

 統一地方選挙が近づいてきた。前半戦の投票日は4月9日で、9道府県知事選と6政令市長選、それに41道府県議選、17政令市議選が予定されている。一般市の市長選や区市町村議会議員選などの後半戦は4月23日。統一選全体では、選挙件数は980件に上る見通しだ。また、統一率は議員選挙で41.78%、首長選挙は13.09%となる見込みだ (※)
 各党は公認候補を決定し活発に動きだしている。岸田首相は「地方創生を進める上でも大切な選挙」と位置づけ「しっかり成果を出していきたい」と強調した。一方、野党では立憲民主党が「現有議席を上回る成果を得たい」、維新は「地方議員を600人に」、共産党は「現有議席を確保」、国民民主党は「倍増を目標」と意気込む。
 公明党も準備を進め、2月2日現在、道府県議会で170人(新人52人。女性28人)、政令市市議会で172人(新人37人。女性36人)、市区町村議会では1209人(新人251人。女性460人)。合計で1551人(新人340人。女性524人)の公認候補を決定した。これは党所属議員の半分以上が改選する大規模なもので、山口代表は「全員当選」を目標と定め、2月5日、最重点区と位置付けた横浜市中区から全国遊説をスタートさせた。
 今度の統一地方選は、物価高、エネルギー高、少子高齢化、安全保障への不安等、課題山積の中で行われる。確かな判断力と情熱を持った地方議員が、地域を発展させていく。それだけに選挙では〝目を凝らして〟政治家を選択したい。 続きを読む

言語道断の秘書官発言――世界は既に変わっている

ライター
松田 明

総理秘書官更迭の考えを示す岸田総理(2月4日)

世界で加速する新しい流れ

 2023年1月時点で、世界の33の国と地域で同性婚もしくはそれに準ずる制度が合法化されている。
 米国では2015年6月に連邦最高裁が「同性婚は合衆国憲法の下の権利であり、州は同性婚を認めなくてはならない」との判断を示し、合憲とされた。2022年12月、バイデン大統領は結婚尊重法案に署名。これによって今後、政権が変わっても全米すべての州で同性婚や異人種間の結婚を合法とすることが法律で義務付けられることとなった。
 こうした動きはカトリックが強い中南米でも進み、近年ではアジア各国でも変化が起きつつある。既に台湾が2019年に合法化したほか、タイでも婚姻平等法案が下院を通過した(2022年6月)。
 男性の同性愛行為を違法としてきたシンガポールも22年11月に当該刑法を廃止。さらにインドの最高裁も2018年には同性愛を違法とする法律を無効とする判決を下した。
 こうした急速な変化の背景には、人権意識の高まりはもちろん、経済のグローバル化のなかで人材の獲得競争が各国間で激化していることもある。すべての人に平等な権利を認めない社会では、もはや優秀な人材を得られないのだ。
 一方で、主要先進国(G7)のなかでは日本だけが、いまだに同性婚も認めておらず、性的マイノリティに対する差別禁止法も存在していない。 続きを読む

『摩訶止観』入門

創価大学教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第2回 『摩訶止観』の特徴(2)

[2]天台大師智顗の略歴(2)

天台山を下りる

 天台山に隠棲し、修行に専念していた智顗(ちぎ)も、陳朝の皇帝による再三の申し出を拒否し続けることができず、10年にわたる天台山滞在の後、とうとう585年に天台山を下り、再び建康の地を踏むことになった。智顗は歓迎され、勅命により『大智度論』の題目(「大智度」は、摩訶般若波羅蜜の漢訳)を講義し、また『仁王般若経』を講義した。皇帝ばかりでなく、皇后も皇太子も智顗に帰依し、菩薩戒を受けた。また、『法華文句』の講説を行なった。 続きを読む

芥川賞を読む 第25回『きれぎれ』町田康

文筆家
水上修一

ほとばしるエネルギーとスピード感で狂気を描く

町田康(まちだ・こう)著/第123回芥川賞受賞作(2000年上半期)

コラージュのようなストーリー展開

 ダブル受賞となった第123回芥川賞。その一つが、町田康の「きれぎれ」だった。
 昔、音楽雑誌の編集をやっていた私にとっては、パンクバンド「INU」のボーカル・町田町蔵のほうが作家・町田康よりも印象が強烈だったので、芥川賞受賞のニュースを聞いた時は、「あの町田町蔵が!」と非常に驚いたことを覚えている。彼の処女作「くっすん大黒」は、それ以前、興味本位で読んでみたことがあったのだが、わけの分からない、めちゃくちゃな感じが「さすが町田町蔵だ」と感心したことを記憶している。
「きれぎれ」も、まあ一言で言えば、わけの分からないめちゃくちゃな感じだ。 続きを読む

書評『よみがえる戦略的思考』――希代のインテリジェンス・オフィサーからの警告

ライター
小林芳雄

「価値の体系」「利益の体系」「力の体系」

 昨年(2022年)、コロナウイルスによるパンデミックが収束していない状況下で、ロシアによるウクライナへの侵攻は世界の人々を震撼させた。その影響は広範囲に及び、エネルギーや食糧の供給が危ぶまれるなど複合的な危機を生み出している。勃発から一年がたち終戦の気配すらなく、長期戦の様相すら呈している。こうした危機の原因はどこあるのか、どうすればこの状況から抜け出すことができるのだろうか。本書は元外務省主任分析官でロシア情勢に通暁したインテリジェンス・オフィサー、作家の佐藤優氏による優れたウクライナ危機の分析書である。 続きを読む