物価高騰へ政府の本気――発揮された公明党の底力

ライター
松田 明

物価高対策などに言及する公明党・山口代表(3月9日)

2兆円を超す物価高騰対策

 岸田首相がウクライナを訪問していた3月22日。早朝の7時40分から首相官邸4階にある大会議室で、政府の「物価・賃金・生活総合対策本部」の第8回会合が開かれた。議題は「物価高克服に向けた追加対策等」。
 この会合で、

①電気料金月額2800円軽減の継続(標準世帯)
②4月からの電気料金を月額820円軽減(標準世帯)
③都市ガス料金900円軽減の継続(標準世帯)
④低所得世帯に一律3万円支給
⑤低所得の子育て世帯に子ども1人当たり5万円支給

などが決定。さらに地方創生臨時交付金を大幅に積み増し、LPガスの料金軽減、学校給食費の軽減が進むようにした。また、輸入小麦の政府売り渡し価格も値上げ幅を抑制。飼料価格も抑制し、食料品価格の高騰を抑制できるようにした。 続きを読む

書評『陰謀論入門』――陰謀論に対峙すべき方途を示す

ライター
小林芳雄

陰謀論とはそもそも何か

「アポロ11号の月面着陸は偽物である」「ウォール街を支配しているのは爬虫類人間である」など、陰謀論は部外者からすればバカバカしい内容だ。しかしヒトラーが唱えた「ユダヤ人はドイツ経済を支配しようとしている」という陰謀論は、荒唐無稽であるにも関わらず600万人の犠牲者を生み出すという惨禍を招いた。なぜ人は陰謀論を信じるのか。そもそも陰謀論とはなんだろうか。
 本書は、アメリカにおける陰謀論研究の第一人者である著者が、最新の研究成果や豊富な事例を踏まえてその全体像を明らかにする画期的な入門書である。 続きを読む

『摩訶止観』入門

創価大学教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第7回 発大心(1)

 前回までで「序分(縁起)」の説明が終わり、今回から「正説分」、つまり『摩訶止観』の本論に入る。正説分は、標章、生起、分別、料簡、広説からなっている。広説は、いわば『摩訶止観』全体の構成を意味し、五略十広といわれる。「十広」とは、大意・釈名(しゃくみょう)・体相・摂法(しょうぼう)・偏円(へんえん)・方便・正観(しょうがん)・果報・起教(ききょう)・旨帰(しき)の十章を指す。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第149回 小説を書くことの分からなさ

作家
村上政彦

 人は、なぜ、小説を書くのだろうか。僕は、かつてある新聞社のカルチャー教室で小説の書き方を教えていたことがあった。受講生は、だいたい中高年が多い。男女の比率は同じぐらいだ。
 そのなかでも、印象に残っている人が何人かいて、その一人が80代もなかばの女性Aさんだ。子供のころから本を読むのが好きで、小学生のときには大人の読むような文学を手にしていて、母親からとがめられた。
 本当は、ずっと小説を書きたかったのだが、機会がなくて年老いてしまい、このままでは死ねない、とこの教室を訪れたという。

先生、私の書いた小説を棺桶に入れてくださいますか?

 この言葉は忘れられない。
 プロの小説家と言われる人でも、小説を書くのが楽しくてしようがない、という話は、あまり聞かない。逆に苦痛だ、辛い、という人のほうが多い。デビューする前は、どうしても書きたかった小説が、書かなければならない仕事になると、そうなる。
 でも、本当に筆をおいてしまう人は、ごく稀だ。嫌だ、嫌だ、と言いながら、一作書き終えると、次の小説に取りかかっている。ある小説家は、そういう性なのだ、と言っていた。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第148回 書こうとしない「書く」教室

作家
村上政彦

 なんとなく気になる小説家がいる。作品を読んでもいないし、会ったわけでもない。いしいしんじ――みなさん、知っていますか? 僕は、書店をパトロールしているときに、彼の本を見つけて(手には取らなかったけれど)、いつか読むことになるだろうと直感した。
 ある日、なんのきっかけだったか、アマゾンで数冊、いしいの小説を買った。読んでみると、なぜか懐かしい。むかし読んだ気のするような作品ばかりだった。それから僕は、いしいしんじの隠れファンになった(きょう初めて発表しました!)。
 新刊が出たことを新聞のインタビュー欄で知った。『書こうとしない「書く」教室』。さっそく買って読んでみた。出版社のオンライン講座として収録した話をもとにしているので、とても読みやすい。
 午前の部は、1時間目から3時間目まで。ここで語られるのは、いしいの来し方だ。会社員だったとき、処女作の出版が決まって、二足の草鞋を履いた、と喜んでいたら、急に胸が苦しくなって、見たら、おばあちゃんが乗っていて、2本の指を出している。
 二足の草鞋はだめなんだとおもって、その日、会社を辞めた。それから専業作家になって、読んでいるとき以外は、いつもノートになにか書いている。理由は、「かゆみ」。自分と世の中の境界が、かゆい。それをかきむしるのは、文字であり、言葉だ。 続きを読む