日本共産党の閉鎖体質――「除名」に各界から批判殺到

松田 明

現役党員から示された危機感

 日本共産党が厳しい批判にさらされている。
 ことの経緯はこうだ。日本共産党員で「かもがわ出版」編集主幹をつとめるジャーナリスト・編集者の松竹伸幸氏が、さる1月に著書を出版した。書名は『シン・日本共産党宣言 ヒラ党員が党首公選を求め立候補する理由』(文春新書)
 松竹氏は一橋大学に在学中の1974年に日本共産党に入党。卒業後は党の専従職員となり、国会議員秘書、党本部の政策委員会で安保外交部長などをつとめた。2001年の第19回参議院選挙では同党の比例区候補(落選)にもなっている。
 2005年、同党の月刊誌『議会と自治体』(5月号)に寄稿した論文が、志位委員長の批判を受ける。1カ月近い論争の末、同じ雑誌の翌月号に自己批判文を書かされた。
 翌2006年、党本部を退職してかもがわ出版に入社。ジャーナリストとして多くの著書も執筆し、編集長などを歴任した。
 それでも松竹氏は「共産党員であることの誇りと志は変わらなかったし、毎月欠かさず収入の1パーセントを党費として納め(カンパはもっと多額だが)、所属する支部の会合には欠席したことがない」(『シン・日本共産党宣言』)という筋金入りの党員だった。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第146回 本当に頭のいい人とは?

作家
村上政彦

 頭がいい、といわれてうれしくない人はいないだろう。けれど、頭のよさとは何か? と考え始めると、よく分からなくなる。
 僕には、「3バカ」が社会を悪くするという自説がある。
 まず、IQバカ。これは、いわゆるお勉強がよくできて、高学歴なのだが、世間の常識にうとかったり、人の心が分からなかったりするバカだ。次に、筋肉バカ。腕力だけが自慢で、物事をあまり考えないバカのこと。そして、権力バカ。権力を持ったとたんに、自分が偉くなったと勘違いして、あちこちに迷惑をかけるバカである。
 この3バカは、頭がいいとはおもえない。和田秀樹さんが、IQバカのことを「高学歴バカ」と呼んでいるのを読んで、僕は自説に力を得た。和田秀樹さんと中野信子さんが、『頭のよさとは何か』という本を出した。「高学歴バカ」は、その本に出てくる。
 僕は、高校を2度も中退し、いろいろあって大学へ入り、在学中に新人賞をもらって、小説家としてデビューしたので、大学はそのままになった。恐らく、授業料未納で除籍となっているから、正式な学歴は高校中退だ。
 こういう人間が「高学歴バカ」なんていうと、ひがみだとおもわれるが、和田さんは、灘中・高を経て、東大理Ⅲに入った高学歴の持ち主だから、素直に聴けるだろう。ちなみに、中野さんも東大出身だ。東大出身のふたりが、頭のよさとは何かについて語り、「高学歴バカ」なんていっているのだから、読まないわけにいかない。 続きを読む

近づく統一地方選挙――日本の未来を決する戦いが始まる

ライター
米山哲郎

〝目を凝らして〟政治家選択を

 統一地方選挙が近づいてきた。前半戦の投票日は4月9日で、9道府県知事選と6政令市長選、それに41道府県議選、17政令市議選が予定されている。一般市の市長選や区市町村議会議員選などの後半戦は4月23日。統一選全体では、選挙件数は980件に上る見通しだ。また、統一率は議員選挙で41.78%、首長選挙は13.09%となる見込みだ (※)
 各党は公認候補を決定し活発に動きだしている。岸田首相は「地方創生を進める上でも大切な選挙」と位置づけ「しっかり成果を出していきたい」と強調した。一方、野党では立憲民主党が「現有議席を上回る成果を得たい」、維新は「地方議員を600人に」、共産党は「現有議席を確保」、国民民主党は「倍増を目標」と意気込む。
 公明党も準備を進め、2月2日現在、道府県議会で170人(新人52人。女性28人)、政令市市議会で172人(新人37人。女性36人)、市区町村議会では1209人(新人251人。女性460人)。合計で1551人(新人340人。女性524人)の公認候補を決定した。これは党所属議員の半分以上が改選する大規模なもので、山口代表は「全員当選」を目標と定め、2月5日、最重点区と位置付けた横浜市中区から全国遊説をスタートさせた。
 今度の統一地方選は、物価高、エネルギー高、少子高齢化、安全保障への不安等、課題山積の中で行われる。確かな判断力と情熱を持った地方議員が、地域を発展させていく。それだけに選挙では〝目を凝らして〟政治家を選択したい。 続きを読む

言語道断の秘書官発言――世界は既に変わっている

ライター
松田 明

総理秘書官更迭の考えを示す岸田総理(2月4日)

世界で加速する新しい流れ

 2023年1月時点で、世界の33の国と地域で同性婚もしくはそれに準ずる制度が合法化されている。
 米国では2015年6月に連邦最高裁が「同性婚は合衆国憲法の下の権利であり、州は同性婚を認めなくてはならない」との判断を示し、合憲とされた。2022年12月、バイデン大統領は結婚尊重法案に署名。これによって今後、政権が変わっても全米すべての州で同性婚や異人種間の結婚を合法とすることが法律で義務付けられることとなった。
 こうした動きはカトリックが強い中南米でも進み、近年ではアジア各国でも変化が起きつつある。既に台湾が2019年に合法化したほか、タイでも婚姻平等法案が下院を通過した(2022年6月)。
 男性の同性愛行為を違法としてきたシンガポールも22年11月に当該刑法を廃止。さらにインドの最高裁も2018年には同性愛を違法とする法律を無効とする判決を下した。
 こうした急速な変化の背景には、人権意識の高まりはもちろん、経済のグローバル化のなかで人材の獲得競争が各国間で激化していることもある。すべての人に平等な権利を認めない社会では、もはや優秀な人材を得られないのだ。
 一方で、主要先進国(G7)のなかでは日本だけが、いまだに同性婚も認めておらず、性的マイノリティに対する差別禁止法も存在していない。 続きを読む

『摩訶止観』入門

創価大学教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第2回 『摩訶止観』の特徴(2)

[2]天台大師智顗の略歴(2)

天台山を下りる

 天台山に隠棲し、修行に専念していた智顗(ちぎ)も、陳朝の皇帝による再三の申し出を拒否し続けることができず、10年にわたる天台山滞在の後、とうとう585年に天台山を下り、再び建康の地を踏むことになった。智顗は歓迎され、勅命により『大智度論』の題目(「大智度」は、摩訶般若波羅蜜の漢訳)を講義し、また『仁王般若経』を講義した。皇帝ばかりでなく、皇后も皇太子も智顗に帰依し、菩薩戒を受けた。また、『法華文句』の講説を行なった。 続きを読む