第4回 序分の構成と内容(1)
湛然(たんねん、711-782)の『摩訶止観』に対する注釈書、『止観輔行伝弘決』(しかんぶぎょうでんぐけつ、以下、『輔行』と略記する)によれば、『摩訶止観』の本文(正説分)の前に、灌頂(かんじょう、561-632)が書いた序分(縁起)が載っている。
この序分の構成は、まず通序と別序から成っている。次に別序については、「付法(ふほう)の由漸(ゆうぜん)を明かす」、「付法相承(そうじょう)を明かす」の二段から成っている。そして、後者の「付法相承を明かす」では、湛然の命名であるが、金口(こんく)相承と今師(こんし)相承が明らかにされる。
今師相承の段は比較的長く、智顗が慧思(えし)から継承した漸次止観・不定止観・円頓止観(えんどんしかん)の三種止観についても説かれている。これらについては、項目を改めて説明する。 続きを読む