沖縄伝統空手のいま 特別番外編④――沖縄の村棒(下)前田棒の歴史 富本祐宏さんに聞く

ジャーナリスト
柳原滋雄

男の義務だった村棒の鍛錬

 村棒の中で最も有名な地域の1つが現在の浦添市に存在する「前田棒」だ。古くは浦添城を守るために農業と武芸を磨いた地域として知られる前田部落(浦添村)が舞台となった。
 前田では棒術をたしなまない者は男として認められず、子どものころから棒を持たされた。15歳から45歳まで棒術の稽古が義務とされ、村祭りともなれば、何日も練習に駆り出され、数回行われる本番(出し物)に備えた。
 そうした村の伝統も、1945年の対米戦争(沖縄戦)で土地や家屋そのものが原形をとどめないほどに破壊され、特に県内最大の激戦地となった前田では、そのすべてが消滅した。戦後、「村棒」の伝統を復活させるまでには多くの苦労があったという。
 1939(昭和14)年生まれで沖縄戦当時は子どもだった前田棒の使い手・富本祐宏(とみもと・ゆうこう、84歳)さんに話を聞いた。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第158回 月や、あらん

作家
村上政彦

 僕は、某大学で文芸創作の授業を担当している。毎年、100人近くの学生たちといっしょに小説の書き方を学んで、彼らの書いた作品を読む。そのなかで、必ず、この若者はいい小説家になるとおもう原石が見つかる。
 今年は不作だとおもう年は、ない。いつの年も原石は見つかる。これまでに3人の学生がプロデビューを果たした。いまも楽しみな教え子が何人かいる。そのうちのひとり、沖縄の教え子は、写真の腕もいい。
 僕は若いころに写真を組み込んだ小説を創作したが、早すぎたのか、まったく世人の眼に止まらなかった。数年前、やっと某批評家が運営するウェブマガジンで写真入りの小説を発表できた(もっともそれも反応はひっそりしたものだったが)。
 いや、語りたいのは、沖縄の教え子の小説だ。言葉選びのセンスがいい。言葉の運びもいい。人物はリアルだ。なにより、それまでの沖縄出身の小説家たちが書いてきた沖縄とは違う沖縄を書く。そのことに、僕は沖縄文学にも新しい波が生まれつつあるとうれしくなった。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま 特別番外編③――沖縄の村棒(上)

ジャーナリスト
柳原滋雄

6尺棒を使った伝統芸能と武術

 2021年の東京オリンピックで正式種目になった空手――。その源流が沖縄にある事実はすでに広く知られるようになった。一方で、空手とともに、棒術をはじめとする古武道の存在もそれと類似している。
 古武道には棒やサイ、ヌンチャクなど複数の道具があるが、最も中心的なのはやはり棒(6尺=180センチほど)だ。もともと沖縄棒術の起源には、各地域で発達した「村棒(むらぼう)」の存在がある。
 それらは村のお祭りなどにおいて披露されるもので、「棒踊り」と呼ばれることがある。6尺棒や3尺棒を用いた「棒踊り」は沖縄県内だけでなく、現在の鹿児島県を中心に、宮崎県や熊本県など九州南部に伝わる。鹿児島県では田植えの時期に田植え歌に合わせてリズミカルに棒を打ち合う踊りが残っているものの、沖縄の棒踊りとはかなり色合いが異なると説明するのは『沖縄の棒踊り』(沖縄文化社、2019年)の著作をもつ勝連盛豊氏(かつれん・せいほう 1947-)だ。勝連氏によると、棒を使った沖縄に残る伝統芸能や武術は大きく3つに分けられるという。 続きを読む

『摩訶止観』入門

創価大学大学院教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第14回 修大行(3)

[1]四種三昧③

非行非坐三昧③

②悪に焦点あわせる

 悪を論じるにあたり、六蔽を悪としている。六蔽は、六波羅蜜を妨げる六種の悪心のことで、慳心(貪欲)・破戒心・瞋恚心・懈怠心・乱心・癡心をいう。これに対して、六波羅蜜が善と規定される。しかし、これは一応の定義であり、善と悪は相対的なものであることを説いている。たとえば、二乗が苦を脱却することは善であるが、自利のみの立場に制限されているので、慈悲に依って広く衆生を救済する蔵教の菩薩に比較すると悪となると説かれる。このような比較によって善悪の相対性が示されるのであるが、結局は円教のみが善と規定されて、次のように説かれる。 続きを読む

新局面を迎えた「同性婚訴訟」――有権者の投票行動にも影響

ライター
松田 明

名古屋地方裁判所

さらに踏み込んだ名古屋地裁

 5月30日、名古屋地裁(西村修裁判長)は、同性カップルの結婚を認めていない現行の法制度について「憲法に違反する」とした判決を下した。
 同性婚を認めないことは憲法14条(法の下の平等)と24条(婚姻の自由)に反するとして、13組のカップルが札幌、東京、名古屋、大阪それぞれの地裁に、2019年2月14日、一斉に提訴していた。
 これまで、札幌地裁(2021年3月)は14条に関して「違憲」と判断。大阪地裁(2022年6月)はいずれも「合憲」。東京地裁(22年11月)は24条2項の部分で「違憲状態」との判決を出していた。
 今回の名古屋地裁判決は、これらよりさらに一歩踏み込んで、14条1項と24条2項のそれぞれで「違憲」だとした。
 折しも国会では「LGBT理解増進法」が自民党保守派の抵抗を抑え込むかたちで広島サミット前に提出されたばかり。
 神道政治連盟や旧統一教会など自民党保守派の支持基盤は同性婚に強く反対している。
 一方、同じ与党でも公明党はスタンスが異なる。 続きを読む