シベットとはいかなる生き物か
「新・動物記」シリーズは、動物の魅力にひかれた若手の研究者が、多くの努力を重ねながら、動物の生態や社会を明らかにするドキュメンタリーシリーズだ。本書はその第4巻にあたる。多くの写真やイラストが収録されており、さらにはQRコードをスマホで読み取ると、現地で収録した動物や鳥の映像や鳴き声などを見たり聞いたりができる。最新の学術成果を一般の読者で学べるさまざまな工夫が凝らされている。
本書『夜のイチジクの木の上で』の著者は若手の女性の研究者である。「知的好奇心」と「たのしさ」を重視しているだけあって、研究の過程で出会った動物の生態やエピソードなどを小気味のよい、分かりやすい文体で、楽しく紹介している。動物や生態系に興味があれば、高校生や中学生でもじゅうぶんに読み通すことができる内容だろう。
本書の主役となる動物はシベットである。この耳慣れない名前の動物の姿が思い浮かぶ人はほとんどいないだろう。古くはジャコウネコと呼ばれていたが、同じ食肉目でもネコとは全く違う動物である。読者の誤解を招かないために本書では一貫してシベットと表記されている。 続きを読む