文学に昇華された、僧侶が描くこの世とあの世のはざまの世界
玄侑宗久(げんゆう・そうきゅう)著/第125回芥川賞受賞作(2001年上半期)
ほぼ満場一致での受賞
第125回芥川賞は、選考委員の石原慎太郎が「今回は全体に候補作の水準が高く、選考委員の間にさしたる異論もなしに受賞作が決まった」と言うように、スムーズに決まったようだ。かなり珍しい。選考委員の河野多惠子が選考会の様子を選評の中でかなり詳しく記していて、それによると3回の投票を通して玄侑宗久の「中陰の花」と長嶋有の「サイドカーに犬」の2作に絞り込まれ、最終的には「中陰の花」が満票で受賞を決めたようだ。
「中陰の花」の受賞に対して異論がほとんど出なかったのは、安定した文章と欠陥の少ない構成と読み物として素直におもしろいということが挙げられるだろう。 続きを読む