持続可能な社会をデザインする
あふれんばかりの情熱と、他者の幸せのために尽くしぬいていく真心。本書を一読して、彼らの放つエネルギーに強く胸を打たれた。
デンマークで生まれ育った日系二世の井上聡・清史の兄弟と、聡の妻であるウラの3人で2004年に立ち上げたデザインスタジオ「ザ イノウエブラザーズ」。彼らが手がけるニットアイテムは南米の中央アンデス高原に生息するアルパカの繊維で作られている。早くからコムデギャルソンの川久保玲氏など世界的デザイナーの目に留まり、今では彼らの代名詞としてファッション業界で広く知られている。
彼らの取り組みが注目されるのは、単に洗練されたアイテムを生み出しているからだけではない。アルパカニットをはじめ、彼らが手がける製品やプロジェクトはすべて「持続可能(サスティナブル)」という視点に貫かれている。優れた文化や伝統技術を支える先住民や女性たちが搾取・差別されている現状や、年々深刻化する気候変動などの解決に資するよう設計されているのだ。
こうしたクリエイティブなアイデアを通じて社会課題の解決を図る「ソーシャルデザイン」の取り組みと、彼らの純粋で情熱あふれる一貫した姿勢が、国境を越えて各地で多くの共感を呼んでいる。 続きを読む