新中国最高峰の知日派
1949年10月1日に毛沢東が天安門広場で中華人民共和国の建国を宣言してから、1972年9月29日に田中角栄と周恩来の両氏が日中共同声明に調印するまで、日本と中国の間では国交が結ばれていない状態が続いていた。
日中国交正常化以降の日中関係史を知る人はいても、それ以前の約23年間の歴史を詳しく知る人はそれほど多くないだろう。
本書では、特に日中の国交が断絶状態にあったこの期間において、新中国きっての知日派であった廖承志(りょうしょうし)と、彼を中心として結成された対日タスクフォース組織が行った対日業務について、8人の執筆者が多角的に分析している。
本書で取り扱われるテーマを見ると、廖承志の携わった対日業務の範囲の広さに驚かされる。
戦後の日本人引揚問題、LT貿易をめぐる交渉、日本の政界、財界、民間団体などとの人脈構築、日中国交正常化への道筋の整備など、実に多岐にわたる分野で廖承志は中心的な役割を果たしてきたのだった。
加えて巻末には、当時廖承志の側近として働いた人たちへのインタビューも掲載されている。廖承志の軌跡を丹念に追うことで、本書自体が国交断絶下の空白の日中関係史を埋める格好の資料となっている。 続きを読む