戦火拡大の背景に迫る
「言論NPO」という民間のシンクタンクが2005年から毎年、日本と中国で実施している世論調査がある。そこでは両国民の相手国への意識調査が行われており、今年の結果では、中国に対して「良くない」印象を持つと回答した日本人は「92.2%」で、日本に対して「良くない」印象を持つと回答した中国人は「62.9%」だった。
一方で、この世論調査には、日中関係の重要性についての質問も設けられており、日中関係を「重要」と答えた両国の回答者はともに6割を超えている。アンケート結果から、両国の多くの国民は互いに決して良い印象は持っていないものの、両国の関係性が重要であることもまた冷静に認識していることが分かる。
日中関係を安定させ、発展させるには、相手に対する正しい理解、とりわけ行動様式の根底に横たわる文化や歴史に対する理解が重要となってくる。相手の振る舞いの意図が見えず、意思疎通を図ることが困難になってしまえば、互いに不信が募ってしまう。
特に両国の関係が悪化している時であれば、そうした負の連鎖がより起きやすくなる。本書『盧溝橋事件から日中戦争へ』を紐解くと、そのことを強く実感させられる。 続きを読む