共産党、党内に新たな火種――止まらぬ〝粛清〟と退潮傾向

ライター
松田 明

「何度も政党変えた連中が……」

 岸田首相が次期総裁選への不出馬を表明し、さらに現職閣僚らに対しても「遠慮なく手を挙げてほしい」と促したことで、俄然、自民党の総裁選にメディアの注目が集まっている。
 もちろん、自民党は過去何十年も総裁つまり首相の顔を挿げ替えることで、巧妙に〝疑似政権交代〟の空気を作り出してきただけという批判もある。ただ、それは自民党に代わり得るだけの勢力と政権担当能力のある野党第一党が存在しなかったから可能だったわけでもある。
 自民党総裁選には、若手や女性も含め新鮮味のある候補者の名前が取りざたされている。この1年以上、支持率低迷に苦しんだ岸田首相は、最後の最後に自民党の浮揚につながる置き土産を残し、自身の影響力温存に成功したということになるだろうか。
 一方の野党第一党・立憲民主党も同じ9月に代表選挙を迎える。こちらは現職の泉健太氏に加え、前代表の枝野幸男氏が出馬表明したほか、かつての民主党政権で最後の首相を務めた野田佳彦氏といった「昔の名前」ばかりがあがっていて、いかにも地味で新鮮味に欠ける。
 X(旧ツイッター)などでは、「この10年間で何度も政党変えた連中が『総裁を代えて刷新感を演出するやり方に国民は騙されるな』とか言ってんの何のギャグなんか」といった、痛烈な声も見られた。 続きを読む

20年超の自公連立政権にみる公明党の力

麗澤大学教授
川上和久

 1999年10月、自由民主党と公明党の連立政権が誕生(当初は、自民党・自由党・公明党の3党からなる連立)。2009〜12年の下野の時代を除いても、20年を超える長期政権となっている。今年で結党60年を迎える公明党が、日本政治の世界で果たしてきた役割と使命を振り返る。

公明党結党以来の金権政治との戦い

 このところの「政治とカネ」をめぐる自民党の体たらくに、多くの有権者は呆れ果てていると言っていいでしょう。
 今回明らかになったのは、政治資金パーティーをめぐる自民党の裏ガネ疑惑です。自民党はパーティー券購入者の公開基準を、現行の20万円超から10万円超に引き下げることで乗り切ろうとしました。
 これに公明党は納得せず、自民党案に厳しく注文をつけてきました。結果的に、これ以外の項目も含めた公明党案を岸田首相はほぼ丸のみし、当初の自民党案よりもはるかに厳しい政治資金規正法改正の流れができました。連立政権のなかに公明党がいることで、腐敗する金権政治に厳しいメスが入ったのです。
 金権政治との戦いは、1961年に公明政治連盟(公明党の前身)が結成されて以来の公明党のアイデンティティーと言ってもいいでしょう。連立政権に入って以降も、大きな成果を出してきました。例えば、2000年、公明党は政治資金規正法を改正して政治家個人への企業・団体献金を禁止しました。また、同年に「あっせん利得処罰法」を制定し、口利きの見返りに議員が報酬をもらう慣例を禁止しています。後にこの法律の改正を進め、議員本人や公務員だけでなく、秘書についても口利きを禁じるよう厳しい縛りをかけました。 続きを読む

『摩訶止観』入門

創価大学大学院教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第57回 正修止観章⑰

[3]「2. 広く解す」⑮

(9)十乗観法を明かす④

 ③不可思議境とは何か(2)

(2)三世間
 法界の次に、三世間(※1)の説明が示される。冒頭には、次のような説明が示される。

 十法界は通じて陰・入・界と称すれども、其の実は同じからず。三途は是れ有漏の悪の陰・界・入、三善は是れ有漏の善の陰・界・入、二乗は是れ無漏の陰・界・入、菩薩は是れ亦有漏亦無漏の陰・界・入、仏は是れ非有漏非無漏の陰・界・入なり。『釈論』に、「法の無上なる者は、涅槃是れなり」と云うは、即ち非有漏非無漏の法なり。『無量義経』に「仏は諸の大・陰・界・入無し」と云うは、前の九の陰・界・入無きなり。今有りと言うは、涅槃常住の陰・界・入有るなり。『大経』に云わく、「無常の色を滅するに因って、常の色を獲得す。受・想・行・識も亦復た是の如し」と。常楽重沓するは、即ち積聚の義にして、慈悲もて覆蓋するは、即ち陰の義なり。十種の陰・界は同じからざるを以ての故に、故(ことさら)に五陰世間と名づく。(第三文明選書『摩訶止観』(Ⅱ)、560-562頁)

 ここでは、十法界について、共通に[五]陰・[十二]入・[十八]界と呼ぶが、その内実は異なるとしている。ここでは、説明として、五陰単独ではなく、十八界、十二入と並べて取りあげているが、説明を単純化するために、五陰のみを取りあげて説明することにする。 続きを読む

本の楽園 第191回 迷子になりたい人のためのガイドブック

作家
村上政彦

 迷子になった経験のない人はいるのだろうか? 僕は臆病者なので、子供のころの迷子体験が、いまも忘れられない。小学生になるかならないかのとき、近所の年上のたっちゃんと遊んでいて、夢中で走り回っているうちに、不意に見たこともない風景のなかにいた。
 帰り道がわからない。僕は不安で泣きそうになった。いや、実際に泣いた。すると、たっちゃんは、泣くな、まあちゃん(子供のころ僕はそう呼ばれていた)、俺が助けたる、とスーパーヒーローのようなポーズをして、あたりを素早く見回し、あちこちの道に踏み込んだ。
 しばらくして、こっちや! と声が聞こえて、彼が姿を見せて手招きしている。そっちへ走っていくと、馴染んだ町の風景が見えた。このときほど、たっちゃんがかっこよくおもえたことはなかった。僕は、ほっとして家に帰った。
 このあいだ、行きつけの本屋をパトロールしていたら、『迷子手帳』という本を見つけた。作者は、歌人の穂村弘。あとがきに、こうある。

……いつまでも迷子であり続ける人のための手帳です。
自分の道がしっかりわかっている人も心配しなくて大丈夫。
これ一冊あれば、貴方もきっと迷子になれる。

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公明、「平和創出ビジョン」策定へ――戦後80年となる2025年

ライター
松田 明

分断と対立を乗り越える日本の役割

 79回目の「原爆の日」を迎えた8月6日、広島平和記念公園での平和祈念式典に参列した公明党の山口那津男代表は、そのあと広島市内で記者会見に臨んだ。
 席上、山口代表は明2025年が「被爆80年」「戦後80年」の節目を迎えることを踏まえ、公明党として「平和創出ビジョン」の策定に入ることを発表した。

公明党の山口那津男代表は6日、広島市内での記者会見で、2025年に戦後80年の節目を迎えるのを受けて党の「平和創出ビジョン」を策定すると発表した。核廃絶、気候変動、人工知能(AI)などを柱にまとめる。
党内に検討委員会を設置し、来春までに内容を詰める。検討委の委員長には谷合正明参院議員が就く。山口氏は「分断を乗り越える日本の役割を推し進める原動力になりたい」と述べた。(『日本経済新聞』8月6日

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