第51回 正修止観章⑪
[3]「2. 広く解す」⑨
(8)陰を観じて境に入る・境に入るを明かす
十広の第七章、「正しく止観を修す」の段落のなかには、いわゆる十境十乗の観法が説かれている。つまり、十種の対象界に対して、それぞれ十種の観察方法によって、その対象界の真実ありのままの様相を観察することが説かれる。これによって、菩薩の初住の位に入ることができるとされる。
まず、十境の第一である陰入界に対して、十乗の第一である観不思議境を明らかにするなかで、一念三千説が説かれる。十境とは、陰入界・煩悩・病患・業相・魔事・禅定・諸見・増上慢・二乗・菩薩の十種の対象界である。これらは真実を観察することを妨げるものとして取りあげられているのである。菩薩でさえも、仏の境界から見れば、真実を観察することを妨げるものと位置づけられている。ただし、この菩薩境は蔵教・通教・別教の三教の菩薩がそれに該当し、円教の菩薩は含まれない。
さて、この段では、冒頭に陰入界についての基本的な説明が次のように示されている。 続きを読む