多彩な美術品が一堂に
本阿弥光悦という人がいた。
16世紀の半ば過ぎに生まれ、17世紀の半ば近くに死んだ。
戦国の世に始まり、織田信長と豊臣秀吉の台頭、徳川家による政権の確立と、時代はめまぐるしく変わった。
光悦は生前から能書として知られていた。現存する書状などから、陶器や漆器の制作にも関わっていたことが分かっている。
京都を拠点とする本阿弥家は、遅くとも室町時代より刀剣の鑑定、磨き、拭いなどを家職とし、歴代の為政者をはじめ名だたる武家に仕えた。
彼ら一族は、日蓮の教えを信奉する法華衆(法華宗)でもあった。「法華衆(法華宗)」の名称は、日蓮が法華経を根幹の経典としたことによる。
2024年1月から3月初旬にかけて、上野の東京国立博物館で特別展「本阿弥光悦の大宇宙」が開催された。
国宝に指定される漆器の「舟橋蒔絵硯箱」、重要文化財に指定される「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」(以下「鶴下絵」)や茶碗の「時雨」など、実にさまざまな美術品が光悦の作として一堂に会した。 続きを読む