吉田証言の問題点と慰安婦の真相は別のもの
今から10年前の2014年8月5日と6日の2日間にわたり、朝日新聞は、従軍慰安婦問題に関する吉田清治(よしだ・せいじ 1913-2000)証言を扱った過去の記事を取消し、訂正する特集を掲載した。慰安婦問題に批判的であった第2次安倍政権時代のことであり、朝日新聞を一斉に批判する風潮が右派メディアを中心に強まった。
その前年頃から、一部メディアは、慰安婦問題に関する総括的な謝罪表明ともいえる「河野官房長官談話」(1993年8月)の信ぴょう性を疑う主張を強め、慰安婦問題でこれ以上日本政府が責任を追及されるいわれはない、との主張を繰り返した。
朝日新聞が吉田清治証言を取り消したことで、右派側は慰安婦の強制連行(いわゆる「慰安婦狩り」)の裏づけも丸ごと無くなったかのように勢いづき、もはや慰安婦問題は終わったかのごとき主張を繰り返した。
しかし、この問題を全体の文脈で振り返れば、吉田清治の主張や証言は、従軍慰安婦問題に関して、実際はほとんど重きをなしていないものだ。 続きを読む