SDGs「行動の10年」へ(下)――創価学会青年部の取り組み

ライター
松田 明

積み残された課題

 本日、我々が発表する17の持続可能な開発目標と169の関連づけられたターゲットは、統合され不可分のものである。このような広範でユニバーサルな政策目標について、世界の指導者が共通の行動と努力を表明したことは未だかつてなかった。持続可能な開発に向けた道を進むにあたって、すべての国や地域に進展をもたらすウィン・ウィンの協力と地球規模の開発のために我々が一つとなって身を費やすことを決めた。

 これは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の一節である。
 ちなみに、この2015年11月30日からは、COP21(第21回気候変動枠組条約締結国会議)がフランスで開催され、「京都議定書」(1997年)に代わる新たな気候変動に関する国際協定として「パリ協定」が採択された。
 前回述べたように、この国連サミットにおいて2016年から2030年までの国際目標として掲げられたのがSDGsである。
 2001年から2015年までのMDGs(ミレニアム開発目標)は、1990年には80%しかなかった途上国の初等教育純就学率を91%(2015年)まで引き上げ、初等教育学齢期にありながら学校に通えていない子どもの数を1億人(2000年)から5700万人(2015年)にまで減らすなど一定の成果を上げた。
 とはいえ、その5700万人のうちの3300万人がサハラ砂漠以南のアフリカ諸国に暮らし、全体の55%が女子であるという格差は依然として残された。
 途上地域では5人に1人が極度の貧困(1日1ドル25セント未満で生活する)に置かれたままであり、日常的に空腹状態を抱えている人の数は世界全体で約8億人にのぼっている。
 15歳以上で読み書きのできない人は世界で約7億人。その3分の2は女性である。

多様な立場の連携がカギ

 SDGsは、こうしたMDGsの成果と積み残した課題をもとに、より具体的なゴールとターゲットを設定することで、2030年までに「誰一人取り残さない」世界を実現するために採択された。
 MDGsでは、途上国の「開発」に焦点が当てられ、先進国の役割はそれを支援することであった。
 これに対しSDGsは、「開発」においては「経済」「社会」「環境」の3つの側面が一体不可分であると捉え、先進国にも共通課題として取り組みが求められている。
 また、ゴールの達成のために国連機関、各国政府、市民、NGO、企業など多様な立場がパートナーシップを強めるよう求めている。
 とくに企業の創造性とイノベーションが重視されており、企業が倫理観を持った持続可能な成長を遂げていくことで、社会のさまざまな課題解決が促進されることをめざしている。
 日本政府は「Development」を「開発」と翻訳しているが、本来はむしろ「発展」「成長」というニュアンスも含まれた概念であり、だからこそ企業のあり方や役割が期待されているのである。
 すでに世界的な流れとして、金融セクターは企業への評価基準として環境や社会課題に取り組む姿勢を重視している。SDGsに取り組まない企業は、信用と可能性に欠けると見なされ資金調達が困難になるのだ。
 反対に、SDGsを共通言語とすることで、企業は優秀な人材、行政や異業種企業、大学、NPOなどさまざまなパートナーを新たに獲得しやすくなる。

国連事務総長の憂慮

 日本において令和がはじまった2019年は「SDGs経営元年」と言われ、多くの企業や団体がSDGsへの取り組みを大きく前進させた。
 一方で、2019年9月にアントニオ・グテーレス国連事務総長は、世界全体でSDGsへの取り組みが遅々として進んでいないことに強い警告を発し、2030年までの残された10年を「行動の10年」とすることを国際社会に発表した。
 国際社会による長年の粘り強い協議で合意形成に至った「パリ協定」も、最大の温室効果ガス排出国の1つである米国のトランプ大統領が〝離脱〟を決定してしまった。「持続可能な開発」の意味するところである「世代間の公平」は、ないがしろにされようとしている。
 スウェーデンの10代の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんに象徴される若い世代による世界的な抗議は、次の世代が生きる地球のことを今の世界のリーダーたちの世代が真剣に考えようとしていないことへの異議申し立てなのである。

いち早く取り組んだ公明党

 国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、2020年の「新年のメッセージ」で次のように述べた。

 今の世界のリーダーたちの世代が 2020年を迎えた今、世界は不確実性に満ちています。不平等と憎悪が蔓延し、戦争と温暖化が続いています。気候変動は長期的な問題ですが、明白な現在の危険でもあります。燃える地球を放っておくわけにはいきません。
 しかし希望もあります。その最大の源である世界の若者たちに、新年のメッセージを送ります。
 社会正義、人権などの課題について、若い世代が先頭に立って声を上げています。その情熱と決意に励まされます。未来を築く一翼をぜひ担ってほしいと思います。
 2020年は国連創設75周年。持続可能な開発目標のため、行動の10年が始まります。若者が声を上げることを、世界は必要としています。

 じつは国際社会のなかで、日本はSDGsへの取り組みがもっとも進んでいる国の一つとして評価されている。
 その大きな推進力となっているのが連立与党の公明党の存在だ。ビル&メリンダ・ゲイツ財団の柏倉美保子・日本代表は、公明党のSDGs推進委員会と外交部会の合同会議で、

「大衆とともに」とのミッションのもと、人間主義、地球益を重んじて平和外交を推進してきた公明党は、SDGsの推進委員会をどこよりも先に設置している。ゲイツ財団としても今後、SDGsを推進していく上で、戦略的なパートナーシップを公明党と進めていきたいと考えている。(「公明ニュース」2019年2月20日

と率直な期待を述べた。

まず100万人の草の根行動へ

 日本政府は2019年12月20日、中長期的な国家戦略である「SDGs実施指針」を初めて改訂した。
 ここでは、2030年までのとくに優先すべき課題として「ジェンダー平等の実現」など8項目を明記。さらに、公明党の要望を踏まえて、目標達成への多様なステークホルダーのなかに「議会」を加えた。
 これにより、全国に約3000人いる公明党議員が「議会」を通して国や地方の政策にSDGsの推進を反映させていくことが期待される。
 また、公明党の支持母体である創価学会でも、青年部が2020年から「SOKAグローバルアクション2030――青年の行動と連帯の10年」をスタートさせた。
 これは、2014年から同青年部が展開してきた平和運動「SOKAグローバルアクション」を発展させたもので、①核兵器廃絶、②アジアの友好、に加えて③SDGs推進を掲げている。
 SDGsの到達点となる2030年は、創価学会の創立100周年にあたる。
 同青年部では、まず今春から100万人を目標に草の根レベルで気候変動対策への取り組みを喚起する「マイ・チャレンジ10」を展開するほか、各種セミナーの開催、諸団体との協力連携を進めていくという(「聖教ニュース」2020年1月18日)。
 創価学会青年部は、日本社会でも最大級の規模の青年組織である。構成メンバーの社会的属性はじつに多種多様であり、しかも国内だけに閉じず、世界192カ国・地域の創価学会インタナショナルの青年たちとも連帯している。
 創価学会の青年たちが、会内の他の世代層にもインパクトを与え、さらに宗教や宗派の壁を越えて多様な人々と連携できれば、SDGsの推進に大きな力となるだろう。

SDGs「行動の10年」へ:
SDGs「行動の10年」へ(上)――「誰一人取り残さない」との誓い
SDGs「行動の10年」へ(下)――創価学会青年部の取り組み

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