2019参院選直前チェック②――「若者政策」各党の温度差

ライター
松田 明

20代は7割が自公政権支持

 日本経済新聞が6月に実施した世論調査で、興味深い数字が示された。
 安倍政権に対する支持率が、60歳以上では49%にとどまったのに対し、20代では70%に達したのだ。
 この世代間の支持率の乖離は、とくに2017年以降、15ポイント以上の開きを生んでいるという。
 その背景として同紙は、29歳以下の世帯収入が上昇していることや、「幸福度」の上昇を指摘している。

 日本の若者の「幸福度」は統計上でも高まっている。内閣府の調査では18~29歳で「生活に不満がある」と答えた人は16年以降3年連続で20%を下回った。要因とみられるのが就職環境の改善だ。就職氷河期は終わり初任給も上昇した。01年を1として世帯収入の推移をたどると29歳以下は15年ごろから急速に回復し足元では1を上回る。(「日本経済新聞電子版」7月6日

 2012年の終わりに第2次安倍内閣が発足して以来、有効求人倍率、大卒就職率、高卒就職率は、いずれも高い伸びを続けている。
 完全失業率は8年連続の低下。2018年平均の就業者数は6664万人と、6年連続の増加。前年から134万人増えていて、このうち女性が87万人を占めている。
 若い世代は、こうした上向きの変化を肌感覚でリアルに実感しているのだろう。
 自公政権は全世代型社会保障や教育無償化にも取り組み、成果をあげている。今年(2019年)1月、日本経済新聞はすでに次のように指摘していた。

 若年層の政権支持の背景と思われるのは、生活に対する満足度だ。内閣府の調査によれば、20歳代の生活満足度はバブル期の1986~88年には平均で65%あまりだったが、直近の2016~18年には80%を上回った。30歳代も同様な傾向を示している。(『日本経済新聞』1月30日

 立憲民主党などは「アベノミクスで生活は良くなっていません」などと繰り返しているが、これは若い世代の実感とは違う。
 むしろこうした情緒的でネガティブな政権批判にばかり終始していることが、野党が若者からますます支持されない要因になっているのではないのか。

公明党は女性と30代で1位

 自公政権が若者の支援に力を入れていて、それが若い世代からも評価されていることは、別の調査からも明らかになっている。
 超党派の国会議員たちによる「若者政策推進議連」。この議連の事務局を務めるのが「一般社団法人日本若者協議会」だ。
 若者(39歳以下)の意見を集約して、各政党や政府に対して政策提言をおこなうことを目的とし、2015年に設立された。
 この日本若者協議会が取り組んできたのが「日本版ユース・パーラメント」。スウェーデンやイギリス、ドイツなどの「若者議会」を参考に、若者自身が政党の議員と政策討議をおこなうイベントだ。2019年も2月から与野党の主要政党と個別の討議を開催してきた。
 そのうえで参議院選挙を目前にした6月19日、日本若者協議会は参院選主要政策の公約比較イベント「ワカモノのミカタ政党はどこだ!~新しい時代に若者の声に応える政治を問う~」を参議院議員会館で開催。
 これには自民党、公明党、立憲民主党、国民民主党、日本共産党、日本維新の会から議員が参加し、その模様はニコニコ動画などでも配信された。
 同協議会は、その後6月末までを期間として模擬投票を実施。対象は本人確認を厳密にするために同協議会の個人会員のみを対象とし、14歳~37歳の計140名から回答を得た。
 投票結果は、

 年代別で見ると、10代は自民党が1位、20代は日本維新の会、30代は国民民主党、公明党、日本維新の会が同率1位となった。
 さらに男女別で見ると、女性は公明党が1位、男性は自民党が1位という結果になった。(「日本若者協議会」7月3日のツイート

若者の声に敏感な公明党

 Yahooニュースに投票結果を総括する寄稿をした代表理事の室橋祐貴氏は、各党の公約を詳細に比較提示したうえで、

 若者の政治参加においては、主要6党全党で「被選挙権年齢の引き下げ」(検討・めざすも含まれるが)が入り、特に公明党の公約には「若者政策担当大臣」と「若者政策担当部局」の設置、「審議会への若者の登用」、「若者議会の開催」が含まれた。(「ワカモノのミカタ政党はどこだ!」

 今回のユース・パーラメントでは、「若者の政治参加」以外にも、教育、子育て・女性の社会進出、社会保障、自殺・いじめ・児童虐待などについて、全党に対して計33の政策提言を行ったが、各テーマで提言を反映させることに成功している。
 教育においては、自民党、公明党の公約に「教員の働き方改革」が載り、特に公明党は「給特法」の見直し検討まで踏み込んでいる。(同)

と、与党のなかでも公明党が特に積極的に若者の声に耳を傾け、具体的な政策として提示したことを評価している。
 実際、比較提示された各党の若者政策を見ると、自民党と公明党が充実した具体策を数多く示しているのに対し、野党は総じて抽象的で具体策が少ない。
 若い世代の政権支持率が高いのは、彼らが生活実感の向上を実感していることに加え、与党が若い世代に真摯に向き合っているからだろう。
 ※室橋祐貴氏(日本若者協議会代表理事)が作成した、「若者の政治参加」「教育」「子育て・女性の社会進出」の3項目で各党の公約を比較した表がとても見やすい(比較表のリンク先「ワカモノのミカタ政党はどこだ!」
 これまで各党と討議を重ねてきた室橋氏は、こう語っている。

 公明党の皆さんは、若者の声にとても敏感で、私たちの要望にも熱心に耳を傾け、その実現に尽力していただいているとの印象を抱いています。(中略)非常に勉強熱心で現場の問題に精通しています。(『第三文明』2019年6月号

参院選直前チェック:
2019参院選直前チェック①――議員としての資質があるか
2019参院選直前チェック②――「若者政策」各党の温度差
2019参院選直前チェック③————争点は「安定か混乱か」
2019参院選直前チェック④――政治を変える現実策とは

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