民法が定めた「懲戒権」
3月19日、政府は閣議で「児童福祉法等改正案」を決定した。この改正案では、親や児童福祉施設長らによる〝体罰〟を禁止したことが注目されている。
じつは、民法には親(親権者)が子に〝懲戒〟を加えてもよいという「懲戒権」が定められている。
第820条(監護及び教育の権利義務)
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。第822条(懲戒)
親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。
懲戒権が濫用されないよう、平成23年の法改正で「子の利益のために」という制約が設けられてはいた。
だが、「しつけ」のためと称して、親から子への虐待がなされ、凄惨な死に至ったり、日常的に暴力を受ける事案が相次いでいる。
閣議決定された政府の改正案では、体罰は民法の懲戒権に含まれないことを明記。さらに、民法の懲戒権のあり方についても、法施行2年をめどに検討することを付則として定めた。
「体罰」を容認してきた世論
この懲戒権をめぐっては、平成23年の改正の際にも、体罰を禁止すべきではないかという議論があった。
それでも最終的に「子の利益のために」の条件付きにとどまったのは、日本社会全体に〝しつけのための体罰は必要〟という考え方が多数を占めてきたことが大きい。
それこそ昭和の時代には、「鉄拳制裁」を加える親や教師が、劇画やドラマでも肯定的に描かれていた。民法が作られた明治以来、子どもへの体罰を必要なものだと考える風潮が、平成の後半になっても強く残っていたのである。
自民党や維新など保守政党の議員や支持層には、こうした明治以来の〝道徳〟を美徳と考え、むしろ復古的な主張をする人々が今も少なくない。
だが、社会の潮目が変わりはじめた。
2018年3月には、東京都目黒区内で5歳の女児が父親からの日常的な虐待を受けた末に死亡。加害者の父親と、これを放置した母親が逮捕された。
政府は緊急対策を取りまとめ、児童相談所の態勢強化などを盛り込んだ児童福祉法等の改正案を今国会に提出する準備に入る。
その矢先の2019年1月、今度は千葉県野田市内で、小学4年生の女児がやはり父親から殴打や冷水のシャワーを浴びせられるなどの暴行を受けて死亡。両親が逮捕されるという痛ましい事件が起きた。
公明党の緊急提言が官邸へ
与党のなかでも動きが起きる。
公明党は、児童虐待防止法に体罰禁止規定の新設などを盛り込んだ緊急提言をとりまとめ、2月19日に石田政調会長が首相官邸で菅官房長官に手渡した。
石田氏は官邸で記者団に「実効性のある法改正ができるよう、自民党とよく連携し、法案審査もしっかりやっていきたい」と述べた。
緊急提言では、体罰禁止規定の新設に加え、監護や教育のために子どもを懲らしめることを認めた民法の「懲戒権」について「しつけを理由に体罰などを容認する根拠にされないよう、あり方を見直す」ことを求めた。(『産経新聞』2月19日)
このほど政府が閣議決定した児童福祉法等改正案は、まさにこの公明党の緊急提言を盛り込んだものだ。
山口代表は、閣議決定された3月19日の会見で、
悲惨な児童虐待が二度と起きないよう与野党の幅広い合意形成に努力し、法案を今国会中に成立させたい。(『公明新聞』3月20日)
(児童相談所と警察の連携強化へ)予算の拡充を推進していきたい。(同)
と述べた。
「夜回り先生」が見た公明党
子どもの命を守ることについて、公明党が他党に抜きん出た姿勢と能力を示してきたと語るのは、「夜回り先生」として知られる水谷修・花園大学客員教授だ。
横浜市の夜間高校の教師であった時代、水谷氏は夜の街で薬物などに手を染める子どもたちに声がけをする「夜回り」をはじめた。
だが、1人の教師にできることには、あまりに限界がある。
そこで自民党をはじめ各政党の国会議員と会って話をしていったものの、どの議員も「景気がよくなれば解決するでしょう」とか、ひどい場合には「あなたは大げさに言うけれど、薬物やリストカットが子どもの間でそんなに広まるわけがない。あなたが見た事例は例外だ」などと言うのです。(『第三文明』2019年5月号)
水谷氏と面会した浜四津敏子・代表代行(当時)は、次の予定をキャンセルして水谷氏の話に耳を傾け、涙を流しながら氏の手を握ってこう語ったという。
水谷先生、今日からあなたは1人じゃないですよ。公明党の全地方議員、国会議員が先生とともに一体になって、夜の闇に沈んでいく子どもたち、苦しんでいる子どもたちを助けていきましょうね。(同)
それから20年近く、水谷氏と公明党はタッグを組んで、薬物対策のさまざまな法整備を地方自治体や国のレベルで実現してきた。
このなかで水谷氏が強く実感してきたのが、他党とはまったく異なる公明党の「チーム3000」のネットワークの力だ。
他党は、国会議員を頂点とするピラミッド型になっており、しかも国会議員は自分の選挙区以外のことには関心を示さず、連携もできず、町村レベルの細かいことはわからなかったりすると水谷氏は言う。
この点で公明党は、すべての議員が水平のネットワークでつながり、皆が現場の第一線に入って動いている。
水谷氏は、自身が公明党と連携してきた事例をあげ、
このようにきめ細かく迅速な仕事は、公明党にしかできません。(同)
と述べ、さらに率直な心情をこう吐露している。
他党の議員のように特権に溺れることなく、「大衆とともに」の立党精神のままに歩む。国会議員も地方議員も一体となり、見失われた人、忘れられた人を1人もつくらない。4月の統一地方選挙、7月の参議院選挙では、公明党「チーム3000」を断固として守り、発展させなければなりません。(同)
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