(官房長官に申し入れする公明党PT-「公明ニュース」3月27日より)
選挙に名を借りたヘイト
さる3月29日、〝平成最後〟の統一地方選挙の前半戦となる道府県議選、政令市議選が告示された(4月7日投票)。
後半戦の市区長選、市区議選は14日の告示。町村長選、町村議選は16日の告示。いずれも4月21日の投票となる。
これに先立つ3月26日、公明党が菅官房長官に対し、「選挙ヘイト」対策の徹底を申し入れた。
統一地方選挙に合わせて、公明党は、選挙運動に名を借りたヘイトスピーチを根絶するため、菅官房長官に対し、警察などに適切な対応を促すよう求めました。(「NHK NEWS WEB」3月26日)
この「選挙ヘイト」とは何なのか?
じつは近年、在日コリアンなどへの誹謗・中傷を繰り返す極右団体などが、政治活動、選挙運動に名を借りて、悪質なヘイトスピーチ(憎悪表現)を公然と繰り返す事案が相次いでいる。
2016年の東京都知事選挙では、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の桜井誠氏が立候補。街頭演説などで、在日コリアンや在日中国人などへの中傷を繰り返した。
同氏は現在、「日本第一党」の党首。この政党が、今回の統一地方選でも各地に候補者を立てているのだ。
即座に調査を実施した政府
日本国憲法は「言論・表現の自由」を認めており、とりわけ政治活動においては、民主主義を担保する観点からも規制が最小限に抑えられてきた。
公明党は、2014年に「ヘイトスピーチ問題対策プロジェクトチーム」(座長・遠山清彦衆議院議員)を立ち上げ、このヘイト問題に取り組んできた。
被害者へのヒアリング、有識者との意見交換などを重ね、2015年7月には菅官房長官と上川法務大臣(当時)を訪問。
菅官房長官には、
政府がヘイトスピーチを含む人種差別を許さないという断固たる姿勢を示すとともに、人権教育の強化や啓発活動を
人種差別の撤廃に向けて実効性ある対策を行うためには、各地の人種差別の実態調査を早急に行うべき
と要請し、それぞれに具体的な対策を講じるための要望書を手渡した。
公明党の申し入れを受けて、政府はただちに実態調査を実施。この調査が立法の大きな根拠の1つとなって、2016年5月24日に「ヘイトスピーチ解消推進法」(「本邦外出身者に対する不当な差別的発言の解消に向けた取組の推進に関する法律」)が成立した。
ただし、これは罰則の伴う禁止法ではなく、理念法となっている。
理由は、禁止法にした場合、特定の言論が禁止の対象になるか否かを公権力が判断する「検閲」を認めることにもつながる恐れがあるからだ。
また、禁止法にすると、行政の不作為を避けるためには何らかの罰則を設けなければならなくなり、戦前の治安維持法のような方向性にもなりかねないという懸念があった。
むしろ時間がかかっても、国民全体でヘイトを認めない社会を醸成していくために、理念法にとどめたのだった。
自民党は当初この法案に否定的だったが公明党が説得を続け、別の対案を出していた野党も最終的には与党案に賛成。
公明党が持ち前の合意形成能力を発揮して、衆参両院の法務委員会において全会一致で可決された。
法務省が全国に通達
前述のヘイト団体が統一地方選挙に候補者を立てる動きを見せたことに対し、3月12日、法務省は差別発言への適切な対応を取るよう全国の法務局に通達を出した。
3月20日には、法務省人権擁護局の高嶋局長らが衆議院第2議員会館での公明党プロジェクトチーム合同会議に出席。
席上、法務省からは、選挙運動や政治活動であってもヘイトスピーチに当たる差別的言動であるならば、「(選挙運動とはいえ)その言動の違法性が否定されるものではない」として、人権侵犯事件として立件、処理するよう全国の法務局に通知したことが報告された。
ヘイトスピーチ解消法の成立にも尽力した遠山座長は「政党、政治家としての役割もある。国会論戦の場でもこの問題を取り上げたい」と話した。(神奈川新聞社「カナコロ」3月21日)
政府に「周知徹底」を要請
そのうえで、3月26日に公明党が菅官房長官に申し入れをしたのは、
この法務省の通知を警察、地方公共団体、選挙管理委員会に周知徹底すること。
広く国民にヘイトスピーチ問題に関する啓発強化を行うこと。
の2点である。(「遠山清彦ホームページ」)
菅義偉官房長官に要請書を手渡した党ヘイトスピーチ問題対策プロジェクトチームの遠山清彦座長は「差別発言が違法なのはヘイトスピーチ解消法で明確になった。選挙活動でも違法なものは違法」と強調。2016年成立の同法は、同党の要請で菅氏が実態調査を指示して立法にこぎ着けた経緯もあり、菅氏は「『ヘイトスピーチを許さない』という政府方針の立場から、きちんと対処したい」と応じたという。(神奈川新聞社「カナコロ」3月27日)
「ヘイトスピーチ解消推進法」は、
国民は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性に対する理解を深めるとともに、本邦外出身者に対する不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならない。(第3条「基本理念」)
と定めている。
公明党プロジェクトチームは、警察や自治体、選挙管理委員会などが、この「理念」を空文化することなく、政治活動や選挙運動に名を借りたヘイトスピーチを許さない対応をとることを政府に強く促したのだ。
ヘイトスピーチを許さない社会へ、公明党のリーダーシップに期待したい。
関連記事
ネットワーク政党の強み――高まる公明党への期待
またしても始まった「野合」――野党の醜い主導権争い
自公連立政権7年目①――政権交代前夜の暗雲
自公連立政権7年目②――首相の巧妙な戦術
自公連立政権7年目③――大きく好転した日中関係
自公連立政権7年目④――平和安全法制の舞台裏