地震が起きやすい状態に
大阪府北部を震源とする地震からおよそ1ヵ月が経った。6月18日午前7時58分に発生した最大震度6弱(マグニチュード6.1)の地震が発生した。
死者4人、重傷者15人、軽傷者419人。住宅被害は全壊10棟をはじめ、一部損壊まで含めると33180棟にのぼっている(いずれも総務省消防庁発表7月17日時点)。
発生から11万2千戸以上でガスの供給が止まり、復旧まで1週間を要した。また大阪空港と市街地を結ぶ大阪モノレールも2日間運行を停止。6月23日に再開したものの地震の影響による車両の部品の不具合が見つかり、24日は始発から運転を見合わせた。
死者のうち2人は倒壊したブロック塀によるものだった。
地震が発生した6月18日の昼におこなわれた政府・与党の協議会では、井上公明党幹事長から政府に「緊急に全国の指定された通学路の総点検・調査をしてもらいたい」との申し入れがあり、菅官房長官がただちに関係省庁に指示を出した。
石井国交大臣も6月22日に現地を訪れ、ブロック塀で亡くなった2ヵ所を視察し、黙禱・献花した。
甚大な被害を受けた地域が比較的狭い範囲であったとはいえ、1週間以上、体育館などで避難所生活を強いられている住民もいる。
専門家は、周辺にある3つの活断層に新たなひずみがたまっているとし、
これまでより地震が起きやすい状態になっている可能性がある。(NHK NEWS WEB/6月21日)
と指摘している。
露呈した〝備えの弱さ〟
今回の地震で指摘されていることの一つが、過去の大地震の〝教訓〟が果たして生かされていたのかという点だ。
防災アドバイザーから当該ブロック塀の危険性を指摘されながら、結果的に対応を怠っていた行政には、地震への警戒心が明らかに足りていなかった。
また、公立学校の休校をめぐって、大阪市長と現場の学校や教育委員会で情報の共有ができておらず混乱が生じた。
交通規制についても実施されず、ストップした鉄道から車に移動手段を変える人々が出たことも重なって深刻な渋滞が発生。緊急車両の走行に支障が出た。
企業によっては「出勤しなくてよい」という指示を昼頃になって出したところも多く、これも混乱の要因になったという。
先の西日本豪雨でも指摘されたことだが、人はいざ大きな危機に直面すると〝自分は大丈夫だろう〟という正常化バイアスがかかってしまい、結果的に迅速で的確な判断ができなくなりがちだ。
不幸にして自宅で命を落とされた人は、いずれも転倒した家具による死亡だった。
地震のわずか11日前の6月7日、土木学会が南海トラフ巨大地震の被害について、最悪の場合「20年間で1410兆円」という衝撃的な予測を発表したばかり。
この南海トラフ巨大地震は、70~80%の確率で今後30年以内に発生すると、政府の地震調査委員会から発表されている。
1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震などの激甚な被害を経験しながら、個人や家庭、学校、企業、行政のいずれのレベルでも、大規模地震へのリアリティが十分でなかったのではないだろうか。
5割が「震災を経験していない」
阪神淡路大震災で大きな被害を受けた神戸市では、「震災を経験していない市民」の割合を継続的に算出している。
つまり、1995年1月の震災のあと、神戸市に市外から転入、もしくは出生した神戸市民の数の把握である。
その結果、すでに「震災を経験していない市民」は神戸市民の4割を超えており、2021年には5割になると予想されている(神戸新聞ネクスト)。
神戸市によると、この比率はほぼそのまま市職員にも反映されており、2021年には市職員の半数が阪神淡路大震災を経験していない人で占められることになる。
直下型地震だった阪神淡路大震災では、神戸市が壊滅的な被害を受ける一方で、もちろん大阪府や京都府などでも部分的には甚大な被害があったものの、たとえば大阪のビジネス街などでは当日も日常の生活がおこなわれていた。
東日本大震災や熊本地震も、やはり〝遠くの出来事〟として、それほどの切迫感をもって受け止め切れていなかったのではないか。
あるいは〝怖いことは直視したくない〟という心理が、個人の具体的な震災への備えを無意識に遠ざけていた面もあるだろう。
24年間で52回
今回の地震は震度6弱。この規模の地震はどのくらい日本列島で発生しているか。
じつは阪神淡路大震災以降の「震度6弱」以上の地震は、なんと52回(うち5回は震度7以上)。
東日本大震災の翌日以降からだけでも今回の地震を含めて20回発生している。
つまり、この規模の地震は、いつどこで起きてもおかしくないのだ。
まず、家の中で大きな地震の際に転倒する可能性のある家具はどれか。ガラスや陶器の破片が散乱しそうな場所はどこか。
少なくとも就寝場所には家具が転倒落下しないようにしなければならない。
深夜に停電した場合、どうするか。
飲料用はもちろん、トイレを流すにも水が必要だ。高層階の場合、エレベーターが停止すると給水車が来ても階段で水を運ばなければならなくなる。
ガスが復旧するまでのあいだ、卓上コンロと十分な数のボンベがあれば急場はしのげる。
携帯電話が通じにくい場合も、LINEやツイッターなどSNSはつながりやすい。
外出先で被災したり、移動中の鉄道などで被災した場合、たとえば持病があって薬を服用している人やコンタクトレンズを使用している人も、1日分くらいの予備を常に携帯しておくべきだろう。
健康な人でも空腹になると血糖値が下がるので、バッグに忍ばせる程度の小さな携帯食品もあったほうがいい。
冬であれば、暖房のない場所で一晩過ごすことも十分にあり得るので、使い捨てカイロも必要だ。
常備しておくべきものは基本的にはコンビニですべて調達できる。
東日本大震災でも、ある意味で危機意識や日頃の備えの有無が、生死の分かれ目になった。
賢明に想像力を持って、自分のできることから始めよう。
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